生成AIは世界中で急速に活用されており、さまざまな業界での生産性向上や業務効率化が進んでいます。しかし、日本と世界各国では、生成AIの導入状況や活用方法に大きな違いがあります。
本記事では、生成AIの活用率の違いから具体的な活用事例、そして開発人材不足への対応策としての生成AI活用を解説していきます。
はじめに日本国内で生成AIはどのくらい活用されているのかご存知でしょうか。
総務省が調査した令和6年版情報通信白書によると、個人で生成AIを活用しているのは「9.1%」、今後利用したいと考えている人は「65%」で生成AIを利用している人は少ない現状にあります。
さらに企業の利用率について、日本とアメリカ・ドイツを比較しています。日本の利用率は46.8%と個人の利用に比べるとかなり大きいですが、アメリカでは「84.7%」、ドイツでは「72.7%」と1.5〜2倍近くの差があります。
日本で生成AIを使わない理由では「使い方がわからない」という回答が40%を超えており、次に「自分の生活には必要ない」という回答が多い結果となっています。
参照:令和6年版情報通信白書「総務省」(2024年11月1日)
企業内での生成AI活用が注目を集めています。特に、業務効率化を目指す中で、生成AIをどのように導入し、活用に関するルール作りを進めるかが重要なテーマとなっています。
生成AI(人工知能)は、多くの業務に新たな価値をもたらし、企業の生産性向上や効率化をサポートしています。企業は業務の自動化や情報処理の効率化を目指して、さまざまな方法で生成AIを導入しています。
ここでは、生成AIを活用して成功した企業の事例を3つ紹介します。それぞれの事例がどのように業務を改善し、新たな可能性を開いているのかを見ていきましょう。
パナソニックグループは、社内向けAIアシスタントサービス「PX-GPT」を国内全社員向けに導入しました。
このサービスは、パナソニックコネクトが利用していた「ConnectGPT」を基に開発され、2023年4月14日より約9万人の社員が使用可能となりました。この導入は、グループ全体で進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略「Panasonic Transformation(PX)」の一環として実施され、単なるITシステムの刷新を超えた経営基盤の強化を目指しています。
「PX-GPT」は、日本マイクロソフト株式会社(本社:東京都港区)が提供するクラウドサービス「Azure OpenAI Service」を利用し、社内イントラネット経由でいつでもアクセス可能です。
情報の安全性にも配慮されており、入力データの外部共有が行われない設計や、一定期間後のデータ消去機能が搭載されています。また、英語で質問することでより正確な回答を得られる仕組みも導入されており、利用者が安心して活用できるよう細かい使用ルールが設定されています。
このシステムの展開により、技術職以外の製造部門や営業部門を含む社員の生産性が向上し、業務プロセスの効率化が進むと期待されています。さらに、AIを日常的に活用する環境が整備されたことで、社員が新たなビジネスアイデアを生み出す可能性が広がるだけでなく、AI技術を活用する能力の向上も促進される見込みです。
パナソニックグループは、この取り組みを通じて、社員一人ひとりの成長を支援しながら、企業の競争力を強化するとともに、持続可能な社会の実現に向けた技術革新を推進しています。
参照:7つの原則を約束~「PX」 Panasonic Transformationの現在地「パナソニック ホールディングス株式会社」(2024年11月1日)
参照: AIアシスタントサービス「PX-GPT」をパナソニックグループ全社員へ拡大 国内約9万人が本格利用開始「パナソニック ホールディングス株式会社」(2024年11月1日)
Glicoグループは、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」という企業の存在意義(パーパス)を掲げ、その実現に向けたデジタル戦略を策定しました。組織運営の効率化を進める中で、特にバックオフィス部門における社内問い合わせ対応の負担が明らかになり、この課題を解決するため、AIチャットボットの導入が決定されました。
複数の社内ポータルが存在し、情報検索の難しさから従業員が担当者に直接問い合わせるケースが多く、これが管理部門や情報システム部門の業務に支障をきたしていました。これに対し、Glicoグループは、AIチャットボットを導入し、業務効率化を図るとともに、従業員が自ら問題を調べて解決できる「自己解決型」の社内文化を醸成しました。
AIチャットボットの導入により、Glicoグループは顕著な成果を上げました。特に、年間1万3000件以上の問い合わせを受けていたシステム部門では、約31%の問い合わせ削減を実現し、月々の対応件数も30%以上減少しました。また、FAQの作成や更新が簡単に行えるため、ITに詳しくない部門の担当者でも運用が可能となり、業務全体の効率化が進んでいます。
FAQの更新はExcelを用い、RPA(Power Automate)で自動化されており、リアルタイムで反映される仕組みが整いました。これにより、迅速かつタイムリーな対応が可能となり、社内で「まずはチャボットに聞いてみよう」という文化が根付いているそうです。さらに、PCの入れ替え時には「チャボット」の案内シールを新しいPCに貼り、利用促進が図られました。
※Glicoグループでは、AIチャットボットに「チャボット」という名前をつけています
今後は、AIチャットボットの応答精度をさらに向上させるとともに、FAQのメンテナンスを継続的に行い、ユーザー満足度の向上を目指しています。さらに、システム専用のAIチャットボットを導入し、業務アプリに関する質問にも対応できる体制を整え、AIチャットボットを社内インフラの一部として定着させ、さらなる業務効率化を進めていく予定になっています。
参照:デジタル戦略「江崎グリコ株式会社」(2024年11月1日)
参照:Allganize、Glicoグループのバックオフィス効率化をAIチャットボット「Alli」で支援「Allganize Japan株式会社」(2024年11月1日)
参照:■導入事例■【Glicoグループ様】30%の社内問い合わせ対応を削減。顕在化したバックオフィスの課題を「Alli」で解決「Allganize Japan株式会社」(2024年11月1日)
SMBCグループは、大手銀行グループで最も早く、従業員専用AIアシスタントツール「SMBC-GAI」を開発しました。SMBC-GAIの開発は、わずか4カ月という短期間で実現されています。
このスピードを支えたのは、外部パートナーとの締結です。2022年にマイクロソフトとの戦略的パートナーシップを結び、Microsoft 365などを活用して安全な情報共有体制を整えていました。この技術的な蓄積が、AIツールの迅速な開発を可能にしています。
ここでポイントとなったのがMicrosoft Teamsへの統合です。普段使っているコミュニケーションツールに組み込むことで、従業員は直感的に利用できます。社員は手軽に情報検索や翻訳、音声データの文字起こしができるようになり、業務効率が大幅に向上しました。
生成AIを業務に導入するにあたり、SMBCグループが重視したのは「リスク管理」と「ルール作り」でした。生成AIは、事実に基づかない誤った回答をする可能性があるため、そのリスクを最小限に抑えるための取り組みが社員から求められました。
具体的には、AIが参照したWebサイトのURLを表示し、利用者がその内容を確認できるようにします。また、AIの回答内容の正確性を確認するためのマニュアルや研修も充実させ、社員が適切にツールを使えるように支援しています。
システムを短時間で実現させ、ルール作りに多くの時間を割いた結果が生成AI導入が成功した大きな要因となるでしょう。
実際にSMBC-GAIは導入当初から注目を集め、急速に利用が広がりました。リリースから4ヶ月が経過した時点で1日6,000件、現在は1日あたりの利用回数が12,000件を超え、時間に計算すると2秒に1回使われている計算になります。
利用者からは「期待した回答が得られなかった」といったフィードバックもありましたが、AIとのやり取りをよりスムーズにするため、具体的なプロンプト候補を提示するなど、改善が進められています。
SMBCグループは今後、SMBC-GAIをさらに活用し、特にコールセンター業務への導入を検討しています。現段階では、AIがコールセンター業務を完全に代替することは難しいですが、AIがオペレーターをサポートする形で効率化を進める計画です。AIは、お客さまとの通話内容の記録など、事務的な作業を担当し、オペレーターの負担を軽減することが期待されています。
SMBC-GAIの活用は、業務効率化だけでなく、社員の生産性向上にもつながっています。今後も引き続き、新技術を取り入れながら、業務改善とリスク管理をバランスよく進めていく方針です。
参照:SMBCグループが独自に生み出したAIアシスタント「SMBC-GAI」開発秘話「三井住友フィナンシャルグループ」(2024年11月1日)
企業が抱える開発人材不足の課題は、業種や部門によって異なりますが、生成AIを活用することで効率化や自動化を実現し、現場の負担を軽減する実践的なアプローチが可能です。
ここでは、具体的な課題解決例を3つの分野に分けて解説します。
ソフトウェア開発の現場では、開発スピードが求められる一方で、経験豊富なエンジニアの不足がプロジェクトの停滞を引き起こしています。
生成AIはこの課題を解消する強力なツールです。たとえば、新しいアプリケーション開発の際、生成AIを使えば要件定義をもとに初期コードを自動生成することができます。これにより、エンジニアはゼロから作業を始める必要がなくなり、開発時間を大幅に短縮できます。
また、AIによるデバッグ機能は、エラー箇所を即座に特定し、解決方法を提案することで、修正作業を効率化します。さらに、テスト自動化では、生成AIがテストケースを自動生成し、結果を分析してくれるため、従来の反復作業を削減しつつ、品質の高いシステム開発を実現します。これにより、限られたエンジニアリソースを有効活用しながら、プロジェクト全体の効率が飛躍的に向上するのです。
営業部門でも、生成AIは人材不足や業務効率化の課題に対して有効な解決策を提供します。新規リードへのアプローチでは、生成AIを活用して見込み顧客に送るメールの文面を自動生成できるでしょう。
顧客のプロファイルや興味に基づいたパーソナライズドな内容を作成できるため、反応率が向上し、営業担当者がより質の高い商談活動に集中できるようになります。また、提案書やプレゼン資料の作成にも生成AIが活用されています。
これにより、営業担当者が資料作成に費やす時間を削減し、迅速に商談を進められる環境を整えることが可能です。さらに、過去の営業データを解析し、効果的な営業トークや提案手法を提案することで、個々の営業スキルの標準化も実現。これにより、営業現場全体の生産性が向上します。
マーケティング部門では、膨大なデータの分析やコンテンツ作成が課題となっていますが、生成AIはこれらの作業を効率化し、より戦略的な活動を可能にします。具体的には顧客データをAIが分析することで、ターゲットセグメントや消費者の行動パターンを素早く把握することができます。
このインサイトを基に、マーケティング施策を迅速に改善することが可能です。また、SNS投稿や広告コピーの作成では、生成AIが指定したトーンやキーワードをもとに、複数のバリエーションを短時間で生成します。
クリエイティブ作業にかかる負担を軽減しながら、マーケティングキャンペーンのスピード感を維持できるようになるでしょう。
さらに、顧客一人ひとりの好みに合わせたパーソナライズドなメッセージの作成にも生成AIが活躍。これにより、顧客体験の質を向上させると同時に、ブランドとのエンゲージメントを強化することができます。
生成AIを活用した開発環境の改善は、単なる効率化にとどまらず、組織全体の競争力を高める効果があります。
これらのアプローチを実践することで、開発スピードの向上、品質管理の効率化、そして業務全体の最適化が実現できます。将来的には、生成AIを活用した開発体制が業界のスタンダードとなり、さらなる技術革新をもたらすでしょう。
実際に生成AIを開発する際には、専門性の高いIT人材が必要です。
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