フリーランスエンジニアと正社員、どちらの働き方が自分に合っているのか。この悩みを抱えるエンジニアは少なくありません。
最新の調査によると、フリーランスエンジニアの約37%が正社員への転向を検討した経験があり、実際に10.8%が正社員に戻っています。一方で、正社員からフリーランスへ転身する人も増え続けています。
そこで本記事では、収入・社会保障・キャリアなど7つの観点から両者を徹底比較し、「正社員→フリーランス」「フリーランス→正社員」の両方向について実践的な情報をお届けします。
フリーランスと正社員、どちらが「良い」「悪い」という話ではありません。大切なのは、自分にとってどちらが合っているかを見極めることです。
まずは両者の違いを7つの観点で整理しました。下の比較表を見ながら、自分の状況や価値観と照らし合わせてみてください。
| 正社員 | フリーランス | 正社員が向いている人 | フリーランスが向いている人 | |
| 契約形態 | 雇用契約 | 業務委託契約 | 安定した雇用関係を求める人 | 自由な契約関係を望む人 |
| 収入 | 固定給+賞与 | 案件ベースで変動 | 毎月安定した収入がほしい人 | 実力で高収入を狙いたい人 |
| 福利厚生 | 会社が半額負担 | 全額自己負担 | 社会保障を手厚くしたい人 | 保険料より手取りを優先する人 |
| 働き方 | 会社の規定に従う | 自分で選択 | チームで働くのが好きな人 | 自己管理ができる人 |
| 業務範囲 | チーム開発中心 | 個人作業中心 | マネジメントを目指す人 | 技術に特化したい人 |
| 社会的信用 | 高い | 低め | 住宅ローンを組む予定がある人 | ローン審査を済ませた人 |
| キャリア | 昇進・研修制度あり | 自己研鑽次第 | 組織内でキャリアアップしたい人 | 自分のペースで成長したい人 |
正社員は企業と雇用契約を結び、労働者として働きます。労働基準法で守られ、不当な解雇や労働条件の一方的な変更から保護されます。
一方、フリーランスは個人事業主として案件ごとに業務委託契約を結びます。雇用関係がないため、会社のルールに縛られない代わりに、労働基準法の保護は受けられません。
ただし2024年11月に施行された「フリーランス新法」により、報酬の支払い遅延禁止や契約書面の交付義務など、一定の保護が整備されつつあります。
この違いが、収入・保障・働き方すべての土台になっています。
正社員は毎月決まった給与が振り込まれ、賞与も含めた年間収入の見通しが立てやすいのが特徴です。景気が悪化しても、すぐに給与が下がることはありません。
フリーランスは案件の有無や単価によって収入が大きく変動します。案件が途切れれば、翌月から収入ゼロというリスクも抱えています。
ただし年収水準で見ると、フリーランスエンジニアの方が高い傾向があります。フリーランス協会の調査では、エンジニア・技術開発系フリーランスの77%が年収400万円以上と回答しており、平均年収は600〜700万円程度と推定されています。
一方、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、正社員のシステムエンジニアの平均年収は約557万円です。
「安定」を取るか「高収入の可能性」を取るか。この選択が最初の分岐点です。
正社員は、健康保険・厚生年金の保険料を会社が半額負担してくれます。有給休暇、育休・産休、退職金、通勤手当なども整っています。
フリーランスは国民健康保険・国民年金に自己加入し、保険料は全額自己負担です。有給休暇という概念もなく、病気やケガで働けなくなっても収入保障はありません。
労災保険については、2021年9月からフリーランスも特別加入制度の対象となりましたが、雇用保険には加入できません。
この差は手取り収入に直結します。額面で同じ年収800万円でも、手取りは正社員とフリーランスでかなり違ってきます。この点は後ほど詳しく解説します。
正社員は勤務時間・場所・業務内容が会社の規定で決められます。副業禁止の会社も多く、働き方の自由度は限られています。
フリーランスは参画する案件、働く時間、場所を自分で選べます。調査によると、フリーランスエンジニアの74.3%がフルリモート勤務を希望しており、この自由度がフリーランスの大きな魅力となっています。
ただし「自由」は「責任」とセットです。スケジュール管理、品質管理、案件獲得、すべてを自分でコントロールする必要があります。
自己管理ができる人にとっては天国、苦手な人にとっては地獄。そう表現しても過言ではありません。
出典:マイナビキャリアリサーチLab「フリーランスITエンジニアの全貌」
「フリーランスはやめとけ」「後悔する」という声がある一方で、フリーランスに転身して満足している人も大勢います。
ここでは、フリーランスという働き方のリアルな長所と短所を整理します。成功している人と苦戦している人の違いも見えてくるはずです。
フリーランスエンジニア最大の魅力は、スキル次第で正社員より大幅に収入を増やせることです。
正社員の場合、企業がエンジニアを外注すると、SI企業や派遣会社のマージンが発生します。月単価50万円の案件でも、実際にエンジニアの手元に届くのはその半分程度ということも珍しくありません。
フリーランスなら、このマージンを大幅にカットできます。エージェント経由でも手数料は5〜15%程度で、同じスキルなら手取りが1.5〜2倍になるケースもあります。
成果を出せば出すほど収入に直結する実力主義の環境は、向上心の高いエンジニアにとって大きなモチベーションになります。
ただし「高収入」は可能性であって保証ではありません。市場価値を維持し続ける努力が必要です。
フリーランスは「好きな時に、好きな場所で、好きな仕事をする」働き方を実現できます。
案件や技術分野を自分で選択できるため、興味のある分野に集中することも、幅広く経験を積むこともできます。苦手なクライアントとは契約を更新しなければいいだけです。
人間関係のストレスが軽減され、通勤時間もなくなり、私生活の幸福度が上がったという声は多く聞かれます。
子どもの送り迎えに合わせて働いたり、趣味の時間を確保したり、ワークライフバランスを自分でデザインできるのは、正社員では得にくいメリットです。
フリーランス最大のデメリットは収入の不安定さです。
案件が途切れれば翌月から収入はゼロ。病気やケガで働けなくなっても有給休暇はありません。コロナ禍では多くのフリーランスが案件の打ち切りや減少を経験しました。
また「フリーランス=不安定」というイメージから、社会的信用が低く見られがちです。住宅ローンやクレジットカードの審査で不利になることも少なくありません。
結婚、出産、住宅購入といったライフイベントを控えている場合は特に注意が必要です。これらのリスクに備えて、最低でも半年分の生活費の貯蓄や、民間の所得補償保険への加入を検討しましょう。
フリーランスはエンジニアの仕事だけでなく、営業・契約交渉・請求書発行・経理・確定申告など、すべてを自分で行う必要があります。
会社員時代には意識しなかったこれらの業務に時間を取られ、「技術に集中できない」と不満を感じる人も多くいます。
さらにフリーランス人口の増加で競争は激化しており、案件獲得のための営業努力も欠かせません。「良い仕事をしていれば案件は来る」という甘い考えでは生き残れない時代です。
これらの負担を軽減するには、フリーランスエージェントの活用が有効です。案件紹介だけでなく、契約交渉や請求書発行を代行してくれるサービスもあります。
フリーランスから見ると、正社員は「窮屈」「年収が低い」というイメージがあるかもしれません。しかし、正社員には正社員ならではの価値があります。
フリーランスの読者にとって「正社員に戻る」という選択肢を検討する際の判断材料として、正社員のメリット・デメリットを整理します。
正社員最大のメリットは、毎月安定した収入が保証されることです。
景気が悪化しても基本給は守られ、賞与制度がある企業なら年間収入の見通しも立てやすくなります。急な出費があっても「来月の給料で…」という計算ができる安心感は大きいです。
また、社会保険料の会社負担、有給休暇、傷病手当金など、働けなくなったときのセーフティネットが充実しています。傷病手当金は給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給されるため、長期療養が必要になっても生活が破綻しにくい仕組みです。
家族を持つ人や住宅ローンを組んでいる人にとって、この安定性は何にも代えがたい価値があります。
正社員には昇進・昇格というキャリアパスがあり、マネージャーやCTOを目指す道も開かれています。
研修制度や資格取得支援など、会社がスキルアップを支援してくれる環境があります。自己投資のコストを会社が負担してくれるのは、大きなメリットです。
チーム開発を通じて協調性やリーダーシップを磨き、大規模プロジェクトに参画する経験も積めます。数十人〜数百人規模のプロジェクトマネジメント経験は、フリーランスでは得にくいものです。
フリーランスは「今持っているスキルを売る」仕事になりがちですが、正社員は「将来のスキルを育てる」環境が整っています。
正社員のデメリットは、働き方の自由度が低いことです。
勤務時間、場所、業務内容は会社のルールに従う必要があります。希望しない部署への異動や、やりたくないプロジェクトへの配属もありえます。
また、どれだけ成果を出しても収入はすぐに上がりません。年に一度の評価で数%の昇給があれば良い方で、年功序列の要素が残る企業では実力に見合わない評価を受けることもあります。
スキルの高いエンジニアほど「自分の市場価値はもっと高いはず」と物足りなさを感じるケースが多いです。
<エージェントの視点>
正社員時代の経験は、将来フリーランスになったとき大きな武器になります。チーム開発やマネジメントを経験し、技術だけでなく「事業視点」を身につけたエンジニアは、フリーランス市場でも高単価案件を獲得しやすい傾向があります。
私たちDeFactoryでも、上流工程から対応できるエンジニアや、CTO・VPoE経験者を高く評価しています。正社員時代に「組織の中でしか得られない経験」を積むことが、将来のキャリアの選択肢を広げます。
「フリーランスになりたい」という気持ちだけで飛び込むと、後悔する可能性が高いです。
ここでは、独立前に確認すべきこと、準備すべきことを具体的に解説します。「あのとき準備しておけばよかった…」と後悔しないために、ぜひ参考にしてください。
フリーランスになると、年収の数字だけ見ると上がっても、実際の生活は苦しくなることがあります。その原因は「損益分岐点」を理解していないことです。
正社員は社会保険料を会社が半分負担してくれますが、フリーランスは全額自己負担。有給休暇もなくなるため、休めば収入は減ります。
一般的に、正社員時代と同じ生活水準を維持するには、年収ベースで約1.5倍稼ぐ必要があるとされています。年収500万円の会社員なら、フリーランスで750万円以上稼いでようやく同等の生活レベルです。
【年収シミュレーション比較(目安)】
| 正社員(年収500万円) | フリーランス(年収800万円) | |
| 額面年収 | 500万円 | 800万円 |
| 所得税・住民税 | 約35万円 | 約100万円 |
| 社会保険料 | 約75万円(本人負担分) | 約95万円(国保+国民年金) |
| 手取り目安 | 約390万円 | 約605万円 |
※あくまで概算です。扶養家族の有無、控除の適用状況などで大きく変わります。
年収800万円のフリーランスと年収500万円の正社員で、手取りの差は約215万円。これが「年収1.5倍で同等」と言われる根拠です。「フリーランスになったら年収600万円」という程度では、生活は苦しくなる可能性があります。
独立前に準備すべきは「資金」「スキル」「人脈」の3つです。
資金面: 案件が取れなくても半年〜1年は生活できる貯蓄が理想です。独立直後は案件獲得に時間がかかることもあり、焦って条件の悪い案件を受けてしまうと負のスパイラルに陥ります。
スキル面: 自分の市場価値を客観的に把握し、ポートフォリオを整備しましょう。「何ができるか」を具体的に説明できなければ、案件は取れません。実務経験3年以上が独立の目安とされています。
人脈面: 案件紹介してもらえる可能性のある知人・元同僚とのつながりを広げておきましょう。フリーランスの案件獲得で最も多いのは「知人紹介」です。会社員時代の人脈は、独立後の最大の資産になります。
フリーランスになると社会的信用が下がるため、以下の手続きは会社員のうちに済ませておくのが得策です。
退職後は、開業届の提出(事業開始から1ヶ月以内)、青色申告承認申請書の提出(事業開始から2ヶ月以内)、国民健康保険・国民年金への切り替えなど、各種手続きが必要になります。事前に把握しておくことで、独立後に慌てずに済みます。
「いつ独立するか」は非常に重要な判断です。
実務経験3年以上を目安にする声が多いですが、それだけでなく以下の点も考慮しましょう。
おすすめは「副業から始めて様子を見る」という選択肢です。2018年頃から副業を解禁する企業が増えており、いきなり独立するリスクを避けられます。
衝動的に会社を辞めず、十分な準備と覚悟を持ってから独立することで、後悔のリスクを大幅に減らせます。
【関連記事はこちら】「フリーランスエンジニアはやめとけ」は本当か?市場価値を向上させる生存戦略ガイド
フリーランスから正社員への「出戻り」は、決してネガティブな選択ではありません。
最新の調査では、フリーランスエンジニアの約37%が正社員への転向を検討した経験があり、企業側もフリーランス経験者の採用に前向きです。適切な準備をすれば「出戻り」は十分に可能です。
フリーランスから正社員に戻る人が増えている主な理由は4つです。
1. 収入の安定を求めて: 結婚、出産、住宅購入などライフイベントを機に、安定した収入が必要になるケースです。
2. 福利厚生・社会保障の充実: 年齢を重ねるにつれ、健康面のリスクや将来の年金額を意識するようになります。
3. キャリアの再設計: 大規模プロジェクトへの参画や、新しい技術領域へのチャレンジは、組織に属した方が機会を得やすいです。
4. チーム開発やマネジメント経験を積みたい: PM、VPoE、CTOといったポジションを目指すには、組織での経験が不可欠です。
調査によると、フリーランスから正社員に転向した人の約6割がマネジメント職を経験しています。「スペシャリスト」から「マネージャー」へのキャリアチェンジを志向する人にとって、正社員への転向は合理的な選択です。
企業がフリーランス経験者を採用する際、最も懸念するのは「採用してもまたすぐフリーランスに戻るのでは?」という点です。
この懸念を払拭するには、「なぜ正社員に戻りたいのか」を明確に説明し、長期的に働く意思を示すことが重要です。
説得力のある理由の例:
避けるべき回答:
ネガティブな理由は「また嫌になったら辞めるのでは」という印象を与えます。「正社員でなければ実現できない目標」を具体的に伝えましょう。
フリーランス時代の経験は、正しく伝えれば大きなアピールポイントになります。
具体的な成果を示す:
フリーランスならではの強みをアピール:
履歴書・職務経歴書では、フリーランス期間を「個人事業主として活動」と明記し、プロジェクト実績を具体的に記載しましょう。
<エージェントの視点>
市場価値が高いのは「ビジネス視点を持った出戻りエンジニア」です。
一度フリーランスを経験したからこそ、組織のありがたみがわかる。そして経営視点でコードが書ける。「コスト意識がある」「納期や品質への責任感が強い」「クライアント折衝ができる」といった強みは、フリーランス経験者ならではのものです。
私たちDeFactoryでは、このような「事業視点を持ったエンジニア」を高く評価しています。「出戻り」はネガティブどころか、むしろキャリアの厚みを示すポジティブな経歴です。
フリーランス時代の高収入にこだわりすぎると、転職活動で苦戦する可能性があります。
フリーランスの年収と正社員の年収は単純比較できません。社会保険料の会社負担、有給休暇、福利厚生を考慮すると、額面で2〜3割低くても実質的な待遇は同等ということも珍しくありません。
給与交渉のポイント:
転職エージェントを活用すれば、給与交渉を代行してもらうことも可能です。自分では言いにくい条件交渉も、第三者を通すことでスムーズに進みます。
【関連記事はこちら】【2026年版】フリーランスエンジニア求人の見極め方決定版|年収1,000万超え案件の選び方と獲得ロードマップ
フリーランスと正社員、どちらが「正解」かは人によって異なります。
大切なのは、自分が何を優先したいのかを明確にすることです。
そして、一度選んだ働き方に縛られる必要はありません。ライフステージや市場環境に応じて、柔軟にキャリアを見直すことが大切です。
ITエンジニアは需要が高く、正社員でもフリーランスでも活躍できる可能性に恵まれた職種です。本記事を参考に、後悔のないキャリア選択をしてください。
フリーランスとしてのキャリアに悩んでいる方、正社員への転向を検討している方。あなたの技術が市場でどのくらいの価値になるのか、気になりませんか?
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