「自分の単価は高すぎるのか、安すぎるのか」——フリーランスエンジニアにとって、単価設定は収入を左右する最重要テーマです。高すぎれば案件が来ず、低すぎれば自分を安売りしてしまう。このジレンマに悩む方は多いのではないでしょうか。
本記事では、フリーランスエンジニア向け案件紹介サービス「SkillAssign」を運営するDeFactoryが、発注側の視点も交えながら解説します。基本知識から相場データ、適正診断、交渉術、長期戦略まで網羅。読み終わる頃には、自分の適正単価を見極め、自信を持って交渉に臨めるようになるはずです。
単価を決める前に、まずフリーランス特有の「お金の仕組み」を理解しておきましょう。会社員とフリーランスでは同じ年収でも手取りが大きく異なります。この章を読めば「単価設定の前提条件」が整い、後続の相場データや診断方法を正しく活用できるようになります。
会社員の「給料」とフリーランスの「単価」は、根本的に異なる概念です。
会社員の場合、給与から社会保険料・税金が天引きされた「手取り」を受け取ります。しかも、社会保険料の半分は会社が負担してくれています。
一方、フリーランスは単価(売上)から自分で以下を支払う必要があります。
たとえば月単価80万円の案件でも、これらを差し引くと実際の手取りは大幅に減少します。
この構造を理解せずに「会社員時代と同じ単価でいいや」と考えると、生活が苦しくなるリスクがあります。
「単価=売上」であり、「手取り」ではない——これがフリーランスの収入構造の基本です。
では、会社員時代と同じ生活水準を維持するには、どの程度の単価が必要なのでしょうか。
結論から言うと、会社員時代の年収の1.3〜1.5倍を目安に単価設定すべきです。
以下の比較表をご覧ください。
【会社員 vs フリーランス 手取り比較表(年収500万円の場合)】
| 項目 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 額面収入 | 500万円 | 500万円 |
| 社会保険料 | 約72万円 | 約67万円 |
| 所得税・住民税 | 約36万円 | 約82万円 |
| 手取り目安 | 約392万円(78%) | 約351万円(70%) |
※会社員の社会保険料は労使折半後の本人負担額。
※フリーランスは国民健康保険+国民年金(青色申告65万円控除適用時)
同じ500万円を稼いでも、手取りで約40万円の差が生まれます。さらにフリーランスには表に現れない「隠れコスト」もあります。
これらを含めると、会社員時代と同等の生活水準を維持するには1.3〜1.5倍の単価設定が必要になります。「額面は増えたけど、税金払ったら会社員時代より減っていた」という失敗パターンは珍しくありません。
ただし、悲観する必要はありません。Relance「フリーランスエンジニア白書2024」によると、フリーランスエンジニアの59.5%が「独立後に収入が上がった」と回答しています。適切な単価設定をすれば、収入アップは十分可能です。
出典:Relance「【2024年版】フリーランスエンジニア白書1000人に聞いた!フリーランスエンジニアの実態調査」
フリーランスエンジニアが実務で使う単価の表し方には、主に3種類あります。
1. 人日単価
「1日あたりいくら」で計算する方法です。
計算式:月収 ÷ 稼働日数 = 人日単価
例:月収80万円 ÷ 20日 = 人日単価4万円
案件選びや交渉の基準として便利で、「自分の1日の価値」を把握できます。
2. 月額単価
案件募集でよく見る「月○○万円」という形式です。ただし、想定稼働時間とセットで見ないと判断を誤ります。
例:「月60万円(160時間想定)」と「月50万円(100時間想定)」では、後者の方が時間あたりの効率は良いのです。
3. 時給換算
月額単価を稼働時間で割って算出します。
計算式:月単価 ÷ 稼働時間 = 時給
【時給換算の比較例】
| 案件 | 月額単価 | 想定稼働時間 | 時給換算 |
|---|---|---|---|
| A案件 | 65万円 | 160時間/月 | 4,063円 |
| B案件 | 50万円 | 100時間/月 | 5,000円 |
一見、A案件の方が月収は高いですが、時給換算するとB案件の方が効率的です。「高単価案件だから」と飛びついて残業漬けになっては本末転倒。必ず数字を分解して判断しましょう。
📌 Pro Tip|採用担当の本音
採用担当は「時給換算したときの割高感」を必ずチェックしています。月額だけでなく時給換算で妥当性を説明できると、交渉がスムーズに進みます。
自分の適正単価を知るには、まず市場の相場を把握することが大切です。ここでは経験年数・言語・職種・稼働条件といった複数の切り口から、最新の相場データを紹介します。相場を知ることは交渉時の根拠資料としても活用できます。
フリーランスエンジニアの単価は、経験年数によって大きく変わります。以下の表で自分のポジションを確認してみてください。
【2026年版 経験年数別 単価相場早見表】
| 時給換算 | 相場レンジ(月) | 求められるスキル | 求められるスキル |
|---|---|---|---|
| 1年未満 | 30〜40万円 | 基礎的なコーディング、指示を受けて作業できる | 実務経験を積む、ポートフォリオ充実 |
| 1〜2年 | 40〜50万円 | 一人称で実装可能、基本的な設計理解 | 得意言語・フレームワークの習得 |
| 3年 | 60〜65万円 | 詳細設計〜実装〜テストを自走 | 上流工程への参画経験 |
| 4〜5年 | 70〜80万円 | 基本設計対応可、後輩指導経験 | PM/PL経験、顧客折衝スキル |
| 5〜7年 | 80〜100万円 | 要件定義から参画、チームリード | 専門領域の確立、複数プロジェクト経験 |
| 8〜10年 | 90〜120万円 | アーキテクチャ設計、技術選定 | マネジメント経験、希少スキル |
| 10年超 | 100〜150万円以上 | 組織・事業への技術貢献 | CTO経験、複数領域のスペシャリスト |
出典:エン・ジャパン「フリーランススタート」月額単価動向調査
ポイントは「3年」と「5年」が大きな壁になることです。3年以上になると高単価案件のチャンスが増え、5年を超えると月80万円以上も現実的になってきます。
ただし、経験年数だけで単価が決まるわけではありません。同じ5年目でも、案件の難易度や専門性によって月60万円台の人もいれば、100万円を超える人もいます。
言語によっても単価相場は大きく異なります。「需要が高く、供給が少ない言語」ほど高単価になる傾向があります。
【2026年版 プログラミング言語別 単価相場早見表】
| 言語 | 相場レンジ(月) | 高単価の条件 | 2026年トレンド |
|---|---|---|---|
| TypeScript | 80〜120万円 | React/Next.js経験、設計スキル | 需要増(★★★★★) |
| Go | 80〜120万円 | マイクロサービス設計経験 | 需要増(★★★★★) |
| Python | 70〜110万円 | AI/ML実装経験、データ基盤構築 | 需要増(★★★★★) |
| Rust | 85〜130万円 | システムプログラミング経験 | 急上昇(★★★★★) |
| Scala | 80〜110万円 | 大規模データ処理経験 | 安定(★★★☆☆) |
| Ruby | 70〜100万円 | Rails熟練、設計スキル | 安定(★★★☆☆) |
| Java | 60〜90万円 | Spring Boot、大規模開発経験 | 安定(★★★☆☆) |
| PHP | 55〜80万円 | Laravel、レガシー改修経験 | 横ばい(★★☆☆☆) |
出典:HiPro Tech「ITフリーランスエンジニアの平均月額単価ランキング〜2024年の市場動向と2025年の展望〜」
出典:エン・ジャパン「フリーランススタート」月額単価動向調査(2025年9月度)
2024〜2025年にかけて、TypeScript・Python・Rustの需要が急増しています。特にRustは6か月連続で単価が上昇し、平均93.7万円に達しました。
ただし、言語だけで単価が決まるわけではありません。Java一筋でも、金融系の大規模開発経験があれば月100万円超えは可能です。言語スキルと「業務領域」の掛け算で市場価値は決まります。
同じエンジニアでも、担当するポジションによって単価は大きく変わります。
【2026年版 職種・ポジション別 単価相場早見表】
| 職種・ポジション | 単価レンジ(月) | 特徴 |
|---|---|---|
| PM・PMO | 90〜150万円以上 | プロジェクト全体の責任を負う |
| ITコンサルタント | 90〜130万円 | 経営・事業視点での提案力 |
| テックリード | 80〜120万円 | 技術選定・アーキテクチャ設計 |
| 機械学習エンジニア | 75〜110万円 | AI/ML専門スキル |
| クラウドエンジニア | 70〜100万円 | AWS/GCP/Azure設計構築 |
| セキュリティエンジニア | 70〜100万円 | セキュリティ専門知識 |
| バックエンドエンジニア | 60〜90万円 | API設計・DB設計 |
| フロントエンドエンジニア | 55〜85万円 | UI/UX実装 |
| インフラエンジニア | 60〜90万円 | サーバー・ネットワーク構築 |
出典:フリーランスボード「IT職種別平均年収ランキング」(2024年2月〜2025年12月)
出典:エン・ジャパン「フリーランススタート」月額単価動向調査(2025年11月度)
注目すべきは、PM/PMOや ITコンサルタントなど「上流工程」を担うポジションが突出して高単価であることです。実装スキルに加えて「チームを動かす力」「顧客と折衝する力」を身につけることで、単価は大きく上がります。
📌 Pro Tip|採用担当の本音
実は「実装スキル」より「ドキュメント力」で単価を決めることがあります。設計書やレビューコメントが丁寧なエンジニアは、チーム全体の生産性を上げるため高評価されやすいです。
同じスキルレベルでも、案件の条件によって単価は変動します。
稼働日数による変動
週5フルタイム常駐より、週2〜3日稼働の方が時間単価は割高になりやすい傾向があります。クライアント側も「短時間で成果を出せる即戦力」に対しては、高めの単価を設定するためです。
契約期間による変動
短期・単発案件は、長期案件より高めに設定されることが多いです。これはエンジニア側の「次の案件を探すリスク」を補填する意味があります。
業務範囲による変動
上流工程(要件定義・基本設計)や顧客折衝まで担う案件は、実装のみの案件より単価上乗せが妥当です。責任範囲が広がる分、報酬も上がるべきという考え方です。
成果物単価の注意点
時間単価ではなく「成果物単価」で契約する場合は、バッファを含めた見積もりが必要です。想定外の修正対応が発生しても、追加報酬が出ないリスクがあるためです。
相場データを把握したら、次は「自分の適正単価」を診断しましょう。一つの方法に頼るのではなく、複数のアプローチを組み合わせることで、より精度の高い適正単価が見えてきます。
特別なツールを使わず、自分で適正単価を算出する方法を紹介します。
ステップ1:目標年収を設定する
まず、生活に必要な金額を洗い出します。
これらを合計して目標年収を設定します。
ステップ2:目標月収を算出する
目標年収 ÷ 12か月 = 目標月収
例:年収960万円 → 月収80万円
ステップ3:人日単価を算出する
目標月収 ÷ 想定稼働日数 = 人日単価
例:80万円 ÷ 20日 = 人日単価4万円
この基準単価を2章の相場データと照らし合わせ、高すぎないか低すぎないかを検証します。相場から大きく外れている場合は、目標を調整するか、スキルアップで相場に近づける計画を立てましょう。
各フリーランスエージェントが提供する無料診断ツールも活用できます。
| サービス名 | 設問数 | 所要時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ギークスジョブ | 約50問 | 10分程度 | 詳細診断、精度が高い |
| フリコン | 8問 | 3分程度 | 将来予測付き |
| ISSUE | 7問 | 30秒 | 根拠レポート付き |
| テクフリ | – | 5分程度 | 診断後に案件提案 |
| レバテックフリーランス | – | 5分程度 | 登録不要で利用可能 |
おすすめの活用法は、複数のツールで診断して結果を比較すること。ツールによって算出ロジックが異なるため、複数の結果を見ることでより妥当なラインが見えてきます。
エージェントへの登録を検討している方は、そのまま案件紹介につなげられる利点もあります。
自分のスキル・経験を棚卸しし、市場価値を客観的に評価する方法です。
スキルの棚卸し
以下の項目をリストアップし、それぞれの熟練度を整理します。
熟練度は「指導を受ければできる」「自走できる」「他者を指導できる」の3段階で評価すると明確になります。
プロジェクト経験の整理
これらを整理して「自分は初級・中級・上級のどのレンジか」を判断します。
📌 Pro Tip|採用担当の本音
スキルシートに「定量的な成果」を1つ入れるだけで印象が変わります。「レスポンス速度を30%改善」「テストカバレッジを80%に向上」など、数字で語れる実績を用意しましょう。
ここからは、フリーランスエンジニアの案件紹介を行うDeFactoryが、発注企業の視点をお伝えします。
企業がエンジニアを選ぶとき、単価だけを見ているわけではありません。判断しているのは「この単価でこのスキル・経験のエンジニアを採用する価値があるか」というコストパフォーマンスです。
安すぎる単価のリスク
意外かもしれませんが、安すぎる単価は「自信がないのでは?」「何か問題があるのでは?」と見られるリスクがあります。
高すぎる単価のリスク
一方、相場から大きく外れた高額提示は、予算オーバーで検討対象から外されます。
「即決したくなる」単価設定のポイント
発注側が即決したくなるのは、以下の条件が揃ったときです。
📌 Pro Tip|採用担当の本音
発注側が最も重視するのは「この人に任せて大丈夫か」という安心感です。単価の妥当性よりも、過去の類似案件経験やコミュニケーションの質で判断されることが多いです。
適正単価を把握したら、次は実際に交渉を成功させるテクニックです。単発の交渉術だけでなく、長期的に単価を上げていくキャリア戦略も紹介します。
単価交渉で成功するには「タイミング」と「準備」が重要です。
交渉のベストタイミング
逆に、プロジェクト途中での急な値上げ要求は避けましょう。クライアントとの信頼関係を損ねる可能性があります。
準備すべき根拠資料
「なぜその単価が必要か」を論理的に説明できる状態を作ることが大切です。感情的な交渉ではなく、双方が納得できる「価値交換条件の調整」という姿勢で臨みましょう。
高単価を狙いつつも成約率を落とさないためのテクニックを紹介します。
コツ1:相場の範囲内に収める
2章で紹介した相場データを参考に、クライアントにとって「納得感のある範囲」で提案します。相場から大きく外れると、検討対象から外されるリスクがあります。
コツ2:レンジで提示する
「月80万円」と固定で伝えるより、「月75〜85万円(業務範囲による)」とレンジで提示する方が柔軟性を示せます。クライアント側の予算調整もしやすくなります。
コツ3:長期契約には割引を提案する
「6か月以上の契約であれば月5万円引き」など、クライアントにとってのメリットを作ることで成約率が上がります。長期案件は収入の安定にもつながるため、双方にとってWin-Winです。
【交渉メール/チャットテンプレート】
| 【件名】契約更新に関するご相談 〇〇様 いつもお世話になっております。 貴社プロジェクトでの貢献範囲が当初より拡大しているため(具体的には〜〜〜)、 次回の契約更新にて単価の見直し(+X万円)をご検討いただけないでしょうか? 【根拠】 ・担当範囲の拡大:〜〜〜 ・成果実績:〜〜〜 ・市場相場との比較:〜〜〜 ご検討のほど、よろしくお願いいたします。 |
見積書には内訳を明示し、「この金額でこれだけの価値を提供する」と見える化することで、単なる価格競争ではなく価値訴求型の提案ができます。
単価交渉だけでなく、「どのルートで案件を獲得するか」も手取りに大きく影響します。
エンド直案件(直請け)のメリット
仲介会社を挟まない「エンド直案件」は、中間マージンがないため高単価になりやすいです。仲介会社が複数入ると、それぞれがマージンを取るため、実際に受け取る金額が減ってしまいます。直接契約と比べて月10〜20万円の差が出ることも珍しくありません。
フリーランスエージェントを選ぶ際のチェックポイント
「エージェント選びで年収が数十万円変わる」のは現実です。単価交渉の前段階として、そもそも高単価案件に出会える環境を整えることが重要です。
📌 Pro Tip|採用担当の本音
還元率だけでなく「案件の質」も重要です。還元率が高くても低単価案件しかなければ意味がありません。エンド直案件の比率や、紹介される案件の平均単価も確認しましょう。
【関連記事はこちら】【2026年版】フリーランスエンジニアのリモート・フルリモート実態調査|単価相場と「稼げる」案件の選び方
月単価100万円超を目指すための長期戦略と、よくある失敗例を紹介します。
高単価を実現するための3つの戦略
よくある失敗例と対策
| 失敗パターン | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 自信のなさから安売り | 相場を知らない | 本記事の相場データで客観視 |
| 相場無視の高額提示で案件ゼロ | 自己評価が過大 | 複数の診断ツールで検証 |
| 交渉せず言い値で受け続ける | 交渉への苦手意識 | 根拠資料を準備して挑む |
| 見積もり漏れで赤字労働 | 工数見積もりの甘さ | バッファを含めた見積もり |
| スキルアップせず単価停滞 | 現状維持バイアス | 定期的な市場価値チェック |
失敗から学び、着実に単価を上げていく姿勢が大切です。
【関連記事はこちら】【2026年版】バックエンドエンジニアのポートフォリオの作り方|クライアントに選ばれる項目・技術・構成を解説
本記事では、フリーランスエンジニアの単価について、基本知識から相場データ、適正診断、交渉術、長期戦略まで解説しました。
この記事のポイント
単価設定は「自分の市場価値を知り、高め、適切にアピールするプロセス」です。一度決めたら終わりではなく、スキルアップや実績の積み重ねによって継続的に見直していくことが大切です。
「交渉が怖い」「相場がわからない」と悩む前に、まずは客観的な数字を把握するところから始めてみてください。
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