国内の地方都市を拠点とする開発「ニアショア開発」。海外の拠点に開発を外注する「オフショア開発」に比べてメリットが多いといわれています。
今回は、ニアショア開発のメリットやデメリットを中心に、オフショア開発との違いについてもご紹介したいと思います。
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「ニアショア(Near shore)」とは「近くの海岸」などを意味する言葉。ニアショア開発とは、国内の地方などの企業や事業所に開発業務を外注することです。
例えば、首都圏にある企業が、地方の企業や事業所に開発業務を委託(アウトソーシング)することも「ニアショア開発」に該当します。
ニアショア開発は、都市部の企業と比較して、人件費が安価な地方に開発を外注できるため、人件費を削減できる点が大きなメリットです。
また、海外企業などへ外注するオフショア開発に比べて、言葉や文化の壁などのデメリットがないこともポイントの一つです。
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前述したようにニアショア開発には開発コストの削減という大きなメリットを含め、5つのメリットがあります。
それぞれ順番にご説明します。
企業にかかるコストの中でも大きな割合を占めるのが人件費。都市部に比べて、地方では人権費を抑えやすいのが特徴です。そのため、ニアショア開発により地方の企業へ外注することでコストを削減できるのです。
また、委託先が地理的に近い企業であれば、海外企業に外注するオフショア開発に比べて従業員の移動コストも削減できます。
海外へ委託するオフショア開発の場合、言語や文化の壁によるコミュニケーションの課題がありました。
また、物理的な距離の問題から、現地へ行ってコミュニケーションを図るためには時間やコストの調整も必要です。
しかし、ニアショア開発では比較的近い距離にある地方の企業や拠点での開発のため、スタッフの往来が容易です。対面での打ち合わせもしやすく、トラブルの際にはすぐに現地に向かえます。
コミュニケーションが密になることで開発業務がスムーズに進み、ミスの減少にもつながります。
首都直下地震や南海トラフ地震発生の可能性が指摘されています。首都圏に企業の機能が集中している場合、災害時に開発業務を停止せざるを得なくなるケースも考えられます。
しかし、ニアショア開発により、同じ国内でありながら離れた場所にも拠点があることで、災害が発生した際に企業活動の全面停止を防げるのです。
オフショア開発の場合、外注先が海外のため、国際情勢が悪化した際には影響を受ける可能性があります。
外注先にデモやクーデターが発生、あるいは戦争が起こるなど、日本企業が影響を受けたケースも見受けられます。
ニアショア開発の場合、開発拠点は離れていても同じ国内での開発なので、そのようなカントリーリスクの影響を受ける心配がないのです。
政府が掲げる「地方創生」(各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創ること)の取り組みを受けて、地方によってはニアショア開発に積極的に取り組んでいるケースもあります。
地方経済の活性化を目的とした交付金制度もあり、ニアショア開発を行うことで地域経済や産業の活性化に貢献するというメリットもあるのです。
ここまでニアショア開発のメリットについてご紹介してきましたが、メリットばかりではありません。
コスト削減が最大のメリットであるニアショア開発ですが、優秀なエンジニアは人件費が高く、思ったよりコストカットの効果がみられない場合もあります。オフショア開発に比べて対面での打ち合わせが容易なため、意外と交通費が増えていた、というケースも。
オフショア開発に比べると「大幅なコストカット」という効果が感じられにくい側面もあります。その他の主なデメリットは次の3つあります。
日本のITエンジニアの人材不足は深刻化しています。地方の場合は、都心部に比べてさらにエンジニア不足が顕著だといわれています。そのため、優秀なエンジニアの確保が難しいのです。
また、前述したとおり、優秀なエンジニアはコストが高く、ニアショア開発のメリットであるコスト削減の効果が得られにくいという結果になることも。
エンジニアにも得手不得手があるため、プロジェクトの内容によっては対応できるエンジニアの確保ができないというケースも考えられます。
人材確保の難しさに伴い、発注先の企業を見つけるのが難しいという課題もあります。
地方では開発を委託できる企業が限られており、同じタイミングで別件に携わっていてスケジュール調整ができず、対応できないという状況が起こることも。
ニアショア開発を行う場合は、委託先企業の候補を複数挙げておく必要があるでしょう。
場合によっては、地方では都心部に比べて最新の情報やサービスとの接点が少ないことも。
そのため、地方の企業に委託する場合、最新技術に疎いケースもあり、想定したよりも低い技術力だったりスキルだったりすることもあります。
高い品質での開発を維持するためにも、ニアショア開発を依頼する場合には、依頼内容を精査し、対応できる技術をもった企業であるかの見極めが重要です。
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これまで見てきたように、ニアショア開発とオフショア開発を比較すると、オフショア開発のほうが開発コストを抑えやすく、人材確保がしやすいということがわかります。
しかし、オフショア開発は海外企業に依頼をする分「現地責任者の育成が困難」「エンジニアとの意思疎通・コミュニケーションがしにくい」「進捗管理や課題解決が難しい」などのデメリットもあります。
ニアショア開発とオフショア開発を簡単にまとめてみると以下のようになります。
オフショア開発 | ニアショア開発 | |
特徴 | 海外を拠点:海外の企業や事業所へ外注 | 国内の地方を拠点:地方の企業や事業所へ外注 |
メリット | ・ニアショアよりも開発コストを抑えやすい・エンジニアの確保がしやすい | ・開発コストを抑えやすい ・言語に課題がなく意思疎通がしやすい・進捗管理がしやすい・リスク回避しやすい (災害・国際情勢)・地方創生に貢献 |
デメリット | ・文化の違いによる進捗管理や問題 解決の難しさ・言語の壁による意思疎通の難しさ・現地責任者の育成に時間がかかる | ・優秀なエンジニアの確保が難しい・発注先の選定が難しい・高品質の維持が難しい |
これらはあくまでも目安にすぎず、開発を担う企業によって、コストや得意とする分野は異なるので単純な比較はできません。
次に、ニアショア開発とオフショア開発の人件費を比較してみましょう。
引用:オフショア開発.com
2021年の最新の職種別人月単位を国ごとに示したものです。
スキルや経験により変動しますが基本的な価格で検討すると、オフショア開発はニアショア開発よりもコスト削減できるケースが多いのです。
「ニアショア開発」「オフショア開発」どちらを選んだらいいのかという点では、それぞれの特徴を踏まえ、メリット・デメリットについてよく理解することが何よりも重要です。
コスト削減を優先するのであれば、ニアショア開発よりもオフショア開発を検討すべきでしょう。
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一般的に請負契約で、業務システムなどのように仕様が決まっているものであれば、オフショア開発の「コスト削減」「優秀なエンジニアの確保」「短納期」などのメリットを活かすことができるでしょう。
しかし、プロダクト開発においては、会社の経営者の立場の人たちとエンジニアの連携が必要不可欠です。
オフショア開発の「物理的な距離・時差・言葉の壁」「文化や国民性の認識の違い」「要件仕様の正しい理解」などの課題・デメリットから、ニアショア開発の方が相性がよいといえるのです。
「ニアショア開発」「オフショア開発」どちらを選ぶのかは、自社の開発での優先事項は何なのか、それに対して双方の開発のメリット・デメリットがどのように関わってくるのかを比較検討しつつ、場合によっては両方を使い分けるなど、臨機応変に対応していきましょう。
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では、ニアショア開発の委託先を探す場合にはどのような方法があるのでしょうか?
外注先を探す方法は、企業のホームページを直接調べる方法もありますが、効率的とはいえません。
実は、ニアショア開発を委託するための検索サービスやマッチングサービスがあります。これらのサービスのよい点は、企業ごとの具体的な事業内容や実績を掲載しているので、それぞれの企業が
「どんな分野が得意なのか」
「コストはどの程度なのか」
「アフターサービスはどのようなものがあるのか」など、比較検討が可能なところ。
プロジェクトに最適な企業を選ぶことで、無駄なコストを省きつつ、効率よく開発業務を進められます。
ニアショア開発のためのプラットフォームは「ニアショアIT協会」「ニアショア機構」などが挙げられます。
都市部に拠点を置く「フロント企業」と地方に拠点を置く「ニアショア企業」との連携で、地方の受注機会を増やし、平準化する仕組みを提供する”ことで、地域活性化と人材育成の仕組みを構築しています。
日本全国の正社員として働くエンジニアとテレワーク派遣でつながるプラットフォーム。
国内TI産業の変革と地方の活性化を掲げています。
ニアショア開発のメリットを中心に、デメリットやオフショア開発との違いについても解説しました。
「ニアショア開発」「オフショア開発」それぞれの特徴を踏まえ、メリット・デメリットをよく理解した上で、どちらが自社にとって最適な条件で開発可能なのか、しっかり検討していきましょう。
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