日本国内でのIT人材不足は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速や新規事業の展開において大きな課題となっています。
優秀なIT人材の確保を目指す企業が多く、採用市場は熾烈を極めているといえるでしょう。
本記事では、IT人材の採用が難しい理由やその解決策を詳しく解説します。採用担当者やプロジェクトマネージャーが直面する課題を分析し、採用戦略を成功させるためのヒントにしてください。
日本のIT市場では、企業のDX推進や業務効率化へのニーズが急増している一方で、必要なスキルを持つ人材が不足している状況が続いています。
特にAI、クラウド、セキュリティといった高度な技術分野では、国内の教育機関やトレーニングプログラムが追いついていないため、適切な人材の育成が十分に進んでいません。
また、経験豊富な中堅エンジニアが求められる中、新卒から中堅層への成長が追いつかないという「世代間のギャップ」も大きな課題となっています。
このような背景により、企業は優秀な人材を獲得するためにさまざまな困難に直面しています。ここでは、具体的な課題として「採用競争の激化」や「専門知識の壁」などについて詳しく解説します。
近年、エンジニア職の採用競争がますます激化しています。特に「情報処理・通信技術者」の求人倍率は高い水準を維持しており、2024年12月には3.25倍に達しました。この数字は、転職希望者一人あたり3.25件の求人があることを示しており、エンジニアの採用を巡る競争が非常に厳しくなっていることを表しています。
2024年においても、求人倍率はほぼ3倍を超える状態が続いており、2024年4月には3.29倍、5月には3.28倍といった高い値を記録しています。この傾向は、IT業界の成長とともに、エンジニアの需要が依然として非常に高いことを示唆しています。
情報処理 ・ 通信技術者(求人倍率 / 東京)
2024年4月 | 3.29 |
2024年5月 | 3.28 |
2024年6月 | 3.10 |
2024年7月 | 3.17 |
2024年8月 | 3.16 |
2024年9月 | 3.23 |
2024年10月 | 3.10 |
2024年11月 | 3.10 |
2024年12月 | 3.25 |
参照:東京ハローワーク_【東京】職業別有効求人・求職状況(平成29年度~)「東京ハローワーク」(2025年2月20日)
特に東京では、多くの企業が優秀なエンジニアを求め、採用活動を強化しているため、求職者にとってはチャンスであると同時に、採用の競争が激化している状況です。
このような背景から、エンジニアのキャリアを考える上で、現在の求人市場をしっかりと把握し、求職者のニーズや企業の要望に応えるスキルを磨くことが重要となっています。
その結果、採用競争は激化の一途をたどり、企業側にとってはより高い採用コストが求められるというわけです。
また、採用競争が激しいと、内定を出しても他社に奪われるリスクが高まるため、迅速な意思決定と候補者へのフォローが不可欠といえるでしょう。
IT業界全体で人材が不足している背景には、技術の急速な進化とそれに伴う新しいスキルの需要増加があります。AI、クラウド、ブロックチェーン、セキュリティ分野などでの専門知識を持つ人材は特に需要が高く、育成が追いついていません。
また、若年層の労働人口が減少しているため、IT業界に参入する新しい人材の絶対数も不足しているのが現状です。この結果、既存のIT人材に高い需要が集中し、市場の競争をさらに激化させています。
IT人材の採用では、候補者のスキルセットや経験を正確に理解することが求められますが、採用担当者がIT分野の専門知識を十分に持っていない場合、評価が難しくなることがあります。
たとえば、プログラミングスキルやクラウドサービスの運用経験など、具体的な技術に精通していないと、面接や書類選考で適切な判断が難しいでしょう。
このため、専門家によるサポートや外部サービスの活用が重要となっています。
リモートワークやフレックスタイム制の普及に伴い、IT人材の働き方に対する期待も大きく変化しています。特に、リモート環境での仕事を希望する人材が増加しており、企業側がこれに対応できない場合、候補者からの関心を得るのが難しくなります。
また、IT人材は他の業種と比べて、職場環境やプロジェクト内容に対するこだわりが強い傾向があるため、柔軟性と魅力のある労働条件が必要になります。
日本のIT業界では、グローバル市場との競争も影響しています。海外企業がリモートワークを活用して日本の人材にアクセスすることが増えており、国内企業だけでなく国際的な競争も採用活動に影響を与えています。
こうした中で、IT人材の確保がこれまで以上に難しくなっているのです。ここからは、IT人材採用を成功させる5つのポイントをお伝えします。
採用活動を効果的に進めるためには、まず採用の目的を明確にする必要があります。
例えば「新規プロジェクトに必要なエンジニアを確保する」や「既存システムの運用を効率化するためにセキュリティエンジニアを採用する」など、具体的なゴールを設定することが重要です。
この目的に基づいてペルソナを明確化することで、必要なスキルや経験を持つ候補者にターゲットを絞りやすくなるでしょう。
求人情報は、応募を検討する候補者にとって企業の「顔」ともいえる存在であり、第一印象を大きく左右します。特に競争が激しいIT人材市場において、効果的な求人票を作成することは、優秀な人材を引きつけるために欠かせないポイントです。
「使用するプログラミング言語やツール」「プロジェクトの内容や規模」「キャリアパスや成長の機会」などの具体的な内容を求人票に盛り込みましょう。
IT人材は、求められるスキルや技術スタックが自身の得意分野や興味と一致しているかどうかを重視しています。
「Python」「JavaScript」「AWS」「Docker」といった具体的な言語やツールを明示することで、候補者は自分がそのポジションで活躍できるイメージを持ちやすくなるでしょう。
どの程度の経験が必要なのかを示すことで、応募者のミスマッチを防ぐことができます。
IT人材は、単に技術を駆使するだけでなく、取り組むプロジェクトそのものに価値を見いだす傾向があります。そのため、プロジェクトの目的や目標、具体的な規模感(チーム人数や期間など)を伝えることもポイントになるでしょう。
例えば、「新規ECサイトの開発」「社内システムの全面リニューアル」といった詳細が記載されていれば、候補者はその仕事がどのような意味を持ち、自分がどのように貢献できるのかを把握できます。
IT分野では、技術の進化が速いため、エンジニアやIT人材は常にスキルアップやキャリアの機会を求めています。求人票には、将来的なポジションやスキルアップの機会を明記しましょう。
「資格取得支援制度」「社内勉強会」「研修プログラム」などの具体例を示すことで、候補者にとってその企業で働くことがキャリアにどのようなメリットをもたらすかが伝わります。
働き方の多様性を求める人材にとって、リモートワークやフレックスタイム制度の有無は非常に重要です。リモートワークが当たり前になりつつあるため、これらを導入している場合は積極的にアピールしましょう。
「完全リモート可能」「週2日のオフィス勤務」など具体的な条件を明記することで、候補者の期待と企業の条件が一致しやすくなります。
IT人材の採用では、他社よりも迅速に選考を進めることが成功の鍵となります。応募から面接、内定までのプロセスを最短で完了する体制を整えることで、候補者の興味を引きつけたまま内定を提示することができるでしょう。
また、選考過程における適切なフィードバックやサポートは、候補者との信頼関係を構築するうえで重要です。
スカウトサービスや人材エージェントを活用することは、優秀な人材に直接アプローチするための効果的な手法です。特に、転職市場に出てこない受動的な求職者に対しては、これらの手法が有効です。
スカウトメッセージでは、候補者が興味を持つような具体的なプロジェクト内容や企業の魅力を強調することがポイントです。
「IT人材」と一口に言っても、その職種や役割は非常に多岐にわたります。企業のデジタル化が進む中で、さまざまな分野で高度なスキルを持つ人材が求められているでしょう。
職種ごとは独自の役割や必要なスキルがあり、どれも現代のビジネスにとって欠かせない存在となっています。そこでIT人材の職種を5つを紹介していきます。
ソフトウェアエンジニアは、アプリケーションやソフトウェアの設計、開発、テスト、保守を担当する職種です。システム要件を満たすために、プログラミング言語を用いてコードを書き、ユーザーが必要とする機能を実現します。
モバイルアプリやウェブアプリの開発に携わることが多く、プロジェクト全体を通じて重要な役割を果たします。
クラウドエンジニアは、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなどのクラウドプラットフォームを活用して、システムやインフラの設計、導入、運用を行います。
拡張性や信頼性の高いインフラを構築し、コスト効率やセキュリティを最適化する技術が求められます。
サイバーセキュリティエンジニアは、情報資産を守るためのセキュリティシステムを構築・運用する職種です。
脆弱性診断や侵入テスト、セキュリティ監視を行い、サイバー攻撃から企業のシステムやネットワークを防御します。また、緊急時の対応や対策の強化も重要な業務といえるでしょう。
データエンジニアは、データの収集、保存、処理のためのシステムを設計・管理する役割を担います。
効率的なデータフローを構築し、分析のための基盤を整えることで、データサイエンティストやビジネスアナリストが活用できる環境を提供します。SQLやPython、ETLツールのスキルが求められる分野です。
UI/UXエンジニアは、ユーザーが直感的に利用できるインターフェースの設計と実装を担当します。
HTML、CSS、JavaScriptを用いてフロントエンド開発を行いながら、ユーザビリティテストやデザインプロトタイピングを通じて最適なユーザー体験を実現します。デザインセンスと技術力の両方が求められる職種です。
エンジニア採用サイトでは、エンジニア採用に特化した機能やサービスを提供しており、企業が求める技術的なスキルや経験を持つ人材を効率よく採用できる点が大きな特徴です。
ここからはおすすめのエンジニア採用サイトを5つご紹介します。
Greenは、IT業界に特化した求人サイトであり、特にエンジニアやデザイナー、マーケター向けの求人情報を提供しています。このプラットフォームは、エンジニアやクリエイターの採用に特化しており、求人企業が求職者のスキルや実績を基に採用決定を行うことができます。特に、ポートフォリオを作成できる機能があり、求職者は自分のスキルセットやプロジェクト実績を可視化できます。この点が、エンジニア採用における大きなメリットとなります。
また、Greenにはスカウト機能も備わっており、企業は自ら優れたエンジニアを積極的にスカウトすることができます。この機能により、積極的に求職者をターゲットにした採用活動を行うことができ、特に技術力の高い人材を迅速に採用するための手段として活用されます。Greenは、エンジニアに特化した求人サイトとして、その高い効果を発揮するため、エンジニア採用を積極的に行いたい企業にとって非常に有力な選択肢です。
参照:IT/Web業界の求人・採用情報に強い転職サイトGreen(2025年2月20日)
type(タイプ)は、エンジニアや20代の若手人材の採用に強みを持つ転職サイトです。特に、エンジニア職の求人掲載数が豊富で、サイト全体の掲載シェアの50%以上をエンジニア職が占めています。
typeでは、エンジニア採用に特化した「エンジニア転職フェア」を定期的に開催しており、IT系エンジニア職希望の求職者が1,000人以上集まる場となっています。
さらに、業界初のAIマッチング機能を搭載しており、精度の高いマッチングを実現しています。 企業は、AIを活用した行動ターゲティングスカウト機能により、自社とマッチする可能性が高い人材に対してスカウトメールを送ることができます。
参照:転職・求人情報サイトのtype[タイプ](2025年2月20日)
ビズリーチは、高収入を目指すエンジニアやマネジメント職向けの転職サイトで、特にハイクラスのエンジニアをターゲットにした採用に強みを持っています。ビズリーチでは、特に高度な技術を持つエンジニアや、経験豊富なエンジニアを求める企業に最適なプラットフォームです。特にエンジニアリングマネージャーやCTO候補などのハイクラス人材を採用する際に役立つツールが整っています。
企業側は、専任のキャリアアドバイザーを通じてスカウトを行うことができ、ハイクラスなエンジニアに対しても積極的にアプローチすることが可能です。即戦力を求める企業にとって、ビズリーチは非常に効果的なエンジニア採用サイトと言えるでしょう。
参照:転職ならビズリーチ|選ばれた人だけのハイクラス転職サイト(2025年2月20日)
Forkwellは、エンジニア専用の採用サイトで、特にITエンジニアやプログラマー、デベロッパーに特化した求人プラットフォームです。エンジニアのスキルを可視化するための機能が豊富で、技術的なスキルだけでなく、実際に開発したプロジェクトや使用したツールなどの情報を簡単に確認することができます。企業は、スキルに特化した人材を見つけやすく、エンジニアにとっても自分のスキルや実績を最大限にアピールできる場として利用されています。
Forkwellは、求人情報だけでなく、エンジニア向けのイベント情報や勉強会なども提供しており、エンジニアのスキルアップやキャリアアップに貢献しています。技術力が高いエンジニアをターゲットにした採用活動を行いたい企業には、特におすすめのプラットフォームです。
参照:Forkwell(フォークウェル)(2025年2月20日)
レバテックルーキーは、新卒エンジニアの採用に特化した就職支援サービスで、プログラミング経験のある学生やエンジニア志望の求職者と企業がマッチングします。
IT業界に精通したキャリアアドバイザーが求職者に対し、自己PRの作成支援や技術面接対策を行い、スキルレベルの高い候補者を企業へ紹介する点が特徴です。企業は、技術的な基礎が備わった新卒エンジニアにアプローチでき、採用後のミスマッチを減らすことができます。
さらに、スカウト機能を活用することで、企業は優秀な学生に直接オファーを送ることが可能です。これにより、積極的にエンジニアを採用したい企業が、他社に先駆けて優秀な人材を確保するチャンスを得られるでしょう。
参照:ITエンジニアを目指す新卒学生向け就活サービス「レバテックルーキー」(2025年2月20日)
日本のIT業界では、デジタル化の進展に伴い、優秀なIT人材の確保が急務となっています。採用が難しい理由には、技術の進化によるスキルの不足や、IT分野に特化した教育体制の遅れ、そして求職者と企業の間でのギャップが影響しています。
特に、AI、クラウド、セキュリティなど高度な技術に関しては、専門知識を持つ人材が不足しており、採用競争が激化しています。また、リモートワークやフレックスタイムなど、働き方の多様性を求める求職者のニーズにも対応する必要があるでしょう。
IT人材採用を成功させるためには、明確な採用目的の設定、魅力的な求人情報の作成、柔軟な働き方の提供、迅速な選考プロセスの実施、そしてスカウトやエージェントの活用が重要です。また、エンジニア採用に特化したサイトやサービスも多く、これらを活用することで、適切なスキルを持った人材を効率よく採用することが可能です。
エンジニアは採用だけでなく、即戦力となるIT人材を柔軟に確保するために、人材紹介サービスを活用する企業が増えています。プロジェクト単位での開発支援や専門技術を持つエンジニアの確保を迅速に行うためには、採用活動と並行して、最適な人材紹介サービスを活用することが効果的でしょう。
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