近年、AIを活用したサービスの提供をはじめ、AIを組み込んだシステムの業務への導入など、事業においてAIを活用する企業は増えつつあります。
また、生成AIを用いたシステム開発も、コストや人件費の削減、ヒューマンエラー回避の観点から注目されており、自社での導入を検討している企業も少なくないでしょう。
そこで今回は、「自社のシステム開発にAIを活用したい」と考えている担当者の方向けに、AIをシステム開発に用いるメリットや具体的なプロセスについて解説します。
まず基礎的な知識として、AIは「Artificial Intelligence」の頭文字を取った略称であり、日本語では「人工知能」と訳されます。
「人工知能」という言葉のとおり、AIおよびAI技術とは「人工的に人の脳に近い思考や処理といった知的思考をコンピューターに行わせる取り組みや技術」を指します。
近年のAI技術は、画像や音声認識、文章の翻訳、天気予報や自動運転、データを元にした売上予測などに加え、「生成AI」と呼ばれる技術を用いればデザインや文章の生成なども実現可能です。
そのため、日常生活に限らずビジネスの分野など、幅広い場面で活用されているのです。
関連記事:生成AIとは?種類・AIの生成モデル・業務における活用事例
AIおよび生成AIの技術は、前項で挙げたものだけでなく「システム開発」にも用いることができます。
ここでは、生成AIをシステム開発に活用するメリットを解説します。
生成AIは、システム開発に必要なコーディングやテスト、ドキュメントの作成など、さまざまな工程で活用することができます。
その結果多くのタスクを自動化、もしくは半自動化することが可能になるため、システム開発までにかかる時間を大幅に短縮できるメリットが期待できるでしょう。
加えて、自動化や半自動化が可能なタスクを生成AIに任せることで、開発者はより高レベルな機能の実装や設計に集中できる点も強みです。
前述の開発期間の短縮により、開発にともなうソフトウェアやOSのライセンス費用、オフィスの賃貸料といった間接的に発生するコストの削減につながります。
自動化・半自動化により開発スタッフの対応すべき工数も削減できることから、人件費の削減はもちろん開発者不足をカバーし、より効率的にプロジェクトを進めることも可能です。
単純作業や繰り返しが必要な業務において、注意すべきなのは「ヒューマンエラー」の発生といえます。ミスが発生した場合、品質低下や手戻り作業の発生による効率低下につながる恐れがあるでしょう。
生成AIを導入することで、システムの品質向上や効率低下の原因となり得る手戻り作業の削減が可能となるため、ヒューマンエラーの防止に大きく貢献できます。
続いて、生成AIでシステム開発を行なう際に心がけるべきポイントについて3つ挙げ紹介します。
生成AIをシステム開発に導入する際は、必ず事前に「なぜ生成AIを活用するのか」を明確にしておきましょう。
例えば、「開発期間を短縮したい」「人材不足をカバーしたい」「コスト削減」「新しいアイデアの創出」など、企業やプロジェクトによって目的や目標は異なります。
ただ漠然と導入だけを目標にするのではなく、何のために生成AIを使うのかを具体的に定めておくことで、より目標達成に適した生成AIツールの選定にも役立ちます。
システム開発に限りませんが、AIや生成AIを利用する際は不正利用や情報漏洩を防ぐためのセキュリティ対策を行なう必要があります。
自社の機密情報や個人情報といったデータは入力を避ける、もしくはAIに学習させないよう設定するなどの対策を実施したうえで利用すべきです。
加えて、生成AIで作成したコンテンツや出力したコードにセキュリティ面での脆弱性がないか定期的に確認することも欠かさないようにしましょう。
「生成AI」と一口にいっても、その種類や公開されているツールは多岐にわたります。搭載されている機能によってシステム開発において対応可能な業務は異なるため、自社のシステム開発に適したツールを選定しましょう。
例えば、システム開発では以下のようなツールが活用できます。
GitHub Copilot:入力した文章やコードに基づいて生成AIがコードを提案する
Replit:自然言語からコードの生成、反対にコードから自然言語の生成ができる
Appvance IQ:テスト工程の自動化が可能 など
ツールを選定する際は、「コーディングを自動化したい」「データに基づいたアドバイスが欲しい」などの目的に加え、開発体制やシステム要件なども加味するとよいでしょう。
また、機能が異なる複数の生成AIツールを組み合わせるのも手段の一つです。
ここからは、実際に生成AIをシステム開発に活用した場合の具体的なプロセスについて解説します。
関連記事:システム開発の工程(流れ)とは?主な開発手法や手順の基礎知識│専門用語のまとめ
まずは、システムを開発する目的や達成したい目標を決めます。
現状の自社や業務における課題や目標を明確にし、「課題解決や目標達成に役立てるにはどのようなAIシステムを開発すべきか」を考えましょう。
システムの目的や目標を設定したら、それを元に必要な機能要件や性能、品質、AIに求める役割を決めます。
この工程があいまいだと、漠然とAIシステムを導入することになり、期待した成果を得にくくなる恐れもあります。したがって、AIにどのような業務を任せるのか、そのためにはどのようなAIモデルが必要なのかしっかり設定することが大切です。
自社の課題やAIで解決すべき領域、どのようなAIを活用するのかを明確にすることで、次のステップで収集すべき必要なデータも明確になります。
AIモデルの構想や要件定義ができたら、続いてデータの収集とラベル付けのプロセスに進みます。
AIを用いた機械学習およびディープラーニングには、大量かつ質の高いデータが欠かせません。音声や画像、文章などあらゆるデータを収集後、1つずつに適切なラベル付けを行ない、AIモデルが学習しやすい形式に整えることが重要です。
またこのプロセスでは、よりデータの質を高めるために不要なデータのクリーニングや欠損値の確認と処理、データ変換処理(特微量エンジニアリング)なども必要になるでしょう。
①のステップで決めたAIに求める役割をもとに、AIシステムに最適なモデルを選定します。
AIモデルの種類は、データからモデル構築を行なう「教師あり学習」、AIが自らデータを解析し反復学習を行う「教師なし学習」、人の手がなくともデータ分析ができる「ディープラーニングモデル」など多岐にわたります。
また生成AIの場合は、「言語モデル」や「画像生成モデル」など特定のタスクを基準にしたものもあるため、システムを通して解決したい課題に沿って選定しましょう。
AIモデルの選定ができたら、データを活用しながら機械学習を行わせモデルのトレーニングを行いつつ、構想しているプランを実現できるか検証しましょう。
具体的な検証内容としては以下が挙げられます。
AIの機械学習・ディープラーニングに対してデータが必要量確保できているか
想定した精度は出せているか
処理スピード など
AIモデルのトレーニングや検証を進めながら、性能を評価し必要に応じて機械学習モデルの学習過程を制御・調整するハイパーパラメータの調整やモデルの構成・構造の改良を行いましょう。
チューニングは、AIモデルの精度や効率を最大限高めるために欠かせない工程です。
トレーニングおよびチューニングが完了したら、これまでのAIモデルの開発内容をもとに最終的なAIシステムの開発、もしくはシステムへのAIモデルの実装を行います。
開発および実装の際は、インターフェース設計やAPI設定、データフローの管理を行う必要があるでしょう。
システム完成後はテストを実施し、問題なく作動するかチェックしましょう。また、AIモデルをシステムに実装した段階で再度チューニングを行うケースもあります。
システムの開発が完了したら、実際に業務で運用します。開発したAIシステムがきちんと業務のなかで機能するかを確認しつつ、運用中の不具合を解消する保守も必ず実施しましょう。
加えて、当初設定したAIシステムの目標が達成できているかどうかも確認しましょう。達成状況の確認には、以下のサイクルを回す「PDCAサイクル」を適用するのが一般的です。
ここまで、AIを活用したシステム開発のメリットやポイント、プロセスを紹介してきました。
ただ、なかには「システムの導入は検討したいけれど、社内にAIやITに関する専門知識やスキルを持つ人材がいない」「自社だけでは開発できるか不安」と考える方もいるかもしれません。
AIを使ったシステムの自社開発が難しい場合は、受託開発会社など外部の企業に依頼するのも手段の一つです。
ここでは、AIシステム開発を外注した場合の費用相場や依頼先を選定する際のポイントを紹介します。
AIシステム開発を外注する際の費用は、システムの種類や工程によって異なるのが特徴です。
例えば、顧客対応などを行なうAIチャットボットの場合はおよそ50万円から200万円、音声認識メインに行うシステムの場合は100万円からが費用の目安とされています。
そのほか、需要予測や製品の外観検査を行うシステムなどでは導入規模にもよるものの数百万円から1千万を超えるケースもゼロではありません。
また、工程ごとの場合は、コンサルティングでおよそ40万円から200万円、AI化が可能か検証する工程では40万円から200万円程度が相場とされます。
そのほか、PoCでは300万円から500万円、本開発では100万円から300万円×必要な人材の数と期間が費用の目安となります。
ただし、これらはあくまで目安であり、実際の費用は依頼先の企業や開発内容、開発までに必要なリソースや期間によっても変動する点に留意することが大切です。
関連記事:Webシステム開発にかかる費用の相場は?コストを最適化してシステム開発を進めよう
依頼先となる開発会社を選定する際のポイントとしては、まず「複数の会社から見積もりを取ること」が挙げられます。
開発したいシステムの内容を具体的に伝えて複数の見積内容を比較検討することで、適正な価格での依頼が可能になるだけでなく、予算設定にも役立てることが可能です。
そのほか、過去の取引や開発実績、対応できる開発領域や得意分野、開発後の運用や保守などのサポート面が充実しているかなどもポイントとなります。
費用や開発内容だけに注目するのではなく、あらゆる面から総合的に判断することが大切です。
現在、「AI・生成AIを活用したシステムを業務に導入したい」「自社での開発が難しいため外注を検討している」という場合は、ぜひDeFactoryにご相談ください。
DeFactoryでは、AI技術をはじめとしたデジタル人材派遣(SES)事業を展開しているほか、ソフトウェアやシステムの受託開発も行っています。
いずれもお客様のニーズに適した最適なサービスを提供するとともに、ビジネスを支え成功へと導くパートナーとして貢献させていただきます。
AI技術およびAIシステムを用いた事業開発を検討しているご担当者様は、ぜひ問い合わせページより資料請求・無性相談などお気軽にご連絡ください。
システム開発に生成AIを活用することで、開発にかかる時間やコストの短縮や人材不足のカバー、ヒューマンエラーの防止などさまざまなメリットが期待できます。
実際にシステム開発に生成AIを用いる場合は、事前に目的を明確に定めたうえで、適切な生成AIツールを選定することが重要です。併せて、適切なセキュリティ対策を行うなどリスク管理も必要となるでしょう。
生成AIを用いたシステム開発を自社で進めるのが難しい場合は、開発会社などに依頼するのがおすすめです。
その際は、費用はもちろん開発したいシステムの内容や必要なスキル、サポートなどを考慮しながら依頼先を選定するとよいでしょう。