PoCとは?メリット・デメリットや成功させるポイント3選を解説

近年、IT投資による「ビジネス成長」を背景として、PoCを実施する企業が増加傾向にあります。

PoCを実施すれば、開発工数・コストの削減など、新規事業のスムーズな創出を目指す上での豊富なメリットが見込めます。

ただし、その実施効果を高めるには、概要や進め方を把握しておくことが重要です。

今回は、PoCの概要やメリット・デメリットを紹介します。さらに、進め方や成功させるためのポイントも解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

1.PoCとは「新しい概念・技術のデモを行なうこと」

そもそもPoC(Proof of Concept)とは、「概念の実証」という意味を持つ言葉です。ソフトウェア開発においては、“新しい概念や技術、理論などの検証やデモンストレーション“を指します。

基本的には試作開発の前段階に実施し、新しい技術の実現可能性や、効果などを測定するための検証プロセスです。

ちなみに、似た構造を持つ開発手法として、必要最小限の機能を備えた「MVP開発」があります。

PoCでは、新しい概念・技術を検証するにあたって、最小限の機能が実装されたプロダクトの簡易版を使用するのが一般的です。

一方、MVP開発は、ユーザーニーズの高い最小限の機能を備えたプロダクトを制作する開発手法です。開発にかかる工数やコストを抑えられるという点で、両者は共通点があるといえます。

以下の項目では、PoCで検証する内容や、その他の用語との違いについて見ていきましょう。

関連記事:MVP開発とは?新規事業開発に適している3つの理由と開発成功のポイント 

1-1.PoCで検証する3つの内容とは

PoCでは、主に以下3つの内容を検証します。

・費用対効果

・技術面での実現性

・ソフトウェアで必要な機能

まず1つ目の「費用対効果」の検証は、企業がソフトウェア開発を進めるうえで重要な項目の一つです。どれほど斬新な概念・技術であっても、開発工数に対して回収できる利益が少なければ、プロジェクト続行が難しくなるためです。

PoCでは、試作前段階での検証が可能なため、損失を最小限に抑える効果が見込めます。

次に2つ目の「技術面での実現性」の検証は、新規のプロダクトを成功させる際に大切なポイントといえます。特に、大規模なソフトウェア開発の場合は、当初は想定できなかったリスクや弊害が出てくる可能性もあります。

実運用に近い環境で検証できるPoCであれば、あらかじめ実現性を確認できるだけでなく、開発に取りかかった際に検証内容をフィードバックして活用することも可能です。

3つ目の「ソフトウェアで必要な機能」の検証では、実際に必要となる機能の取捨選択を行ないます。例えば、データ分析が可能なソフトウェア開発を実施する場合、画面上で必要なボタン配置などを決定していきます。

より具体的な検証となるため、先述した2つの検証を実施してから取り組むのが一般的です。

1-2.実証実験・プロトタイプとの違い

PoCと混同されやすい用語に、「実証実験」と「プロトタイプ」があります。

まず実証実験とは、「“問題点”を検証する実験」のことです。一方、PoCは「“実現可能性”を検証するプロセス」であるため、実証実験とは目的が異なるといえます。

ただし、PoCの検証途中で問題点が抽出されるケースもあるため、両者が同義で使われるケースも少なくありません。

次に、プロトタイプは、“技術面の実現性や方向性が定まったうえで開発する”ことが特徴です。こちらに関しても、PoCは実現性を検証するため、プロトタイプとは違いがあるといえるでしょう。

開発の流れとしては、まずPoCを用いて実現性を確認した上で、プロトタイプの制作に着手するのが基本です。

2.PoCのメリット・デメリットとは

次に、PoCのメリット・デメリットについて、詳しく見ていきましょう。

2-1.【メリット①】コスト・開発工数の削減につながる

PoCを実行するメリットの一つに、コスト・開発工数の削減につながる点が挙げられます。先述したように、PoCでは「技術面での実現性」や「費用対効果」など、具体的な検証をメインに取り組みます。

特に、新しいソフトウェア開発では思わぬ工数やコストがかかるケースも少なくありません。しかし、PoCを活用して事前に目星を付けておけば、スムーズなプロジェクト立ち上げが実現しやすくなり、結果的にコスト・工数削減へつながる効果が見込めます。

2-2.【メリット②】リスクを抑えてプロジェクトを開始できる

PoCでは、実運用に近い環境を構築して検証を行なうため、リスクを抑えてプロジェクトを開始できるというメリットもあります。

動作の安定性や使い勝手を検証することで、システム開発へ着手する前に、実現可能性を探れるのです。

場合によっては、自社の開発スタッフやモニターにプロダクトを試供して、フィードバックをもらうこともあります。

動作的な不具合や、ユーザーが求める仕様との”ズレ”の少ないシステム開発を進行させれば、市場リリース後のトラブルを回避できる可能性が高まるでしょう。

2-3.【メリット③】プロジェクト実現性を”見える化”できる

PoCのメリットには、プロジェクトの実現性を”見える化”できる点も挙げられます。一般的に企業では、経営層や投資家からの賛同を得られない限り、新たなプロジェクトをスタートできません。

しかし、PoCを実施すれば、技術面での実現性をあらかじめ検証するため、新たなシステム開発に着手するメリットや実装イメージを、具体的に伝えやすくなります。

経営層や投資家からの賛同を得るにあたり、解説の材料として活用できるのは、PoCの大きなメリットといえるでしょう。

また、PoCで“見える化”できたプロジェクトの実現性・質が高い場合は、業務提携オファーを得られる可能性もあります。

2-4.【デメリット】検証回数とコストが比例しやすい

メリットが豊富にある一方、PoCの検証回数は、開発工数と比例する点はデメリットといえます。

というのも、検証に必要なパターン数や実施回数が増えるにつれて、開発工数も増えていくためです。

このような事態を回避するには、PoCを実行する目的の定義付けや、必要プロセスの明確化がポイントとなります。

また、できるだけ最小の単位で、複数の段階に分けて検証を進めることも重要です。具体的な進め方については、次の項目で見ていきましょう。

関連記事:代表的なソフトウェアの開発方法4つ!トレンドの開発方法も解説 

3.【4ステップで解説】PoCの進め方とは

ここからは、PoCの進め方について4つのステップで段階的に解説します。

3-1.ステップ①目的を設定する

まずは、PoCを実行する目的を設定します。設定する目的例は、主に以下です。

・なぜPoCを実行するのか

・期待する効果は何か

・得たいデータは何か

上記のように、具体的にPoCを実施する目的を決める必要があります。

例えば、「業務効率化に向けたRPA(※)やAIを導入する」というケースでは、「削減できる業務時間」や「部署・時期別の目標値」などを具体的に設定します。

ゴールを事前に設定しておくことで、検証プロセス全体の指針がズレることなく、スムーズな検証を実現しやすくなります。

※RPA=従来は人間が実施していた作業を、AIやルールエンジンなどが代行・代替する仕組みのこと。 

3-2.ステップ②検証内容を設定・実装する

次に、PoCの検証内容を決めていきます。ここでは、前述した3つの検証内容をカバーできるように、PoCを実施する期間や条件、スペース、必要となる設備を検討します。

PoCは試作の前段階に実行するため、基本的には必要最小限の機能しか備わっていませんが、できる限り実運用に近い環境で検証を行なうことがポイントです。

また、実際に使用する”ユーザーの目線”に立って検証を進めることで、ステップ①で設定したゴールとのズレを減らす効果も見込めます。

3-3.ステップ③実証する

続いてのステップでは、実証を開始します。実際の環境に近づけて検証し、導入する効果やデータ、技術的な課題、運用面の懸念点を確認します。

その際、想定できる複数のパターンでユーザーに利用してもらうことが重要です。客観的な意見や評価のフィードバックを得ることで、より具体的な改善材料として活用できるためです。

ただし、一部の人からもらったフィードバックの場合、偏った意見になるおそれもあるため、可能な限り多くの関係者からの意見をもらうと、より有益な実証となるでしょう。

3-4.ステップ④実証内容を評価する

最後に、PoCで得られた実証内容を基に、「技術の実用性」「リスク」「費用対効果」の3つを評価します。

当初の想定以上の結果が得られるケースがある一方、目標に届かない結果になるケースもあります。たとえ後者の場合でも、実証することで初めて判明した課題やトラブル事例を整理すれば、次回の検証やその他のソフトウェア開発へ活用できます。

また、このステップでは、結果と課題を擦り合わせたうえで、プロジェクトの継続や見直しなどの判断を行なわなければなりません。

4.PoCを成功させるためのポイント3選

それでは、実際にPoCを実行する際、どのようなポイントを押さえておくべきなのでしょうか。成功させるためのポイントを、以下に3つ示します。

4-1.ポイント①小規模からスタートさせる

1つ目のポイントは、PoCを小規模でスタートさせることです。なぜなら、大掛かりな規模のPoCをいきなり開始すると、開発工数やコストが多くかかるうえ、万一プロジェクトが白紙になった際のリスクが大きくなりやすいためです。

そのため、まずは小さな単位で開始することでリスクを低減でき、目的を明確化しやすくなります。

4-2.ポイント②実運用の環境に近づけて検証する

2つ目のポイントとして、実運用の環境に近づけて検証することが挙げられます。PoCを実施する環境と、実運用環境の違いが大きくなるほど、ユーザーニーズから外れた検証になる可能性が大きくなります。

実運用に近い環境で検証することで、より正確なデータ収集が可能となり、その後のソフトウェア開発での有用性が高い検証材料を得られるでしょう。

4-3.ポイント③PDCAを回しながら取り組む

3つ目のポイントは、PDCAを回しながら取り組むことです。PoCを実施することで、これまで見えていなかった課題や問題が浮き彫りになるケースも多くあります。

そこで得られた課題点や問題点を、PDCAに丁寧に落とし込みながら進行させることで、本開発に向けた準備が可能となるでしょう。

しかし、PoCは4つのステップで実行できるとはいえ、それぞれの段階で注意すべきポイントが複数あります。場合によっては、外部にサポート依頼するのも一つの手です。

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関連記事:DeFactoryのソフトウェア開発・プロダクト開発支援について

5.まとめ:「ソフトウェア開発」に関する支援を承ります

PoCは、費用対効果や技術面の実現性などを、試作前に検証するプロセスを指します。「コスト・開発工数の削減につながる」「リスクを抑えてプロジェクト開始できる」など、メリットは豊富です。

ただし、より効果的な検証を実現するには、「小規模からスタートさせる」「実際の環境に近づけて検証する」などのポイントを押さえる必要があります。

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この記事を書いた人
DeFactory代表取締役 事業開発、デジタルマーケティング(検索領域)、グロースハックが得意領域です。 事業の壁打ちのご相談お受けしております!

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