新しいサービスを世に出すとき、「リーン」「アジャイル」の開発手法は必ずといっていいほど目にするでしょう。「リーン」のムダを省き、必要最小限の資源で最大限の価値を生み出す考え方は、ビジネスの現場でも多く活用されています。
一方、「アジャイル」はプロダクトをいかに早く世に出すかに焦点を当てた開発手法です。
更に最近では、ここに「デザイン思考」というワードも目にするようになりました。
実際、それぞれの関係性がどのようなものか、よくわからないという声もあるので、この記事では、「リーン」と「アジャイル」それぞれの特徴や違いについて、今一度理解を深めると共に、「デザイン思考」との関係性についても詳しく解説します。
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「リーン」と「アジャイル」、どちらも何もないところからプロダクトやサービスを開発するという点では同じですが、着目するポイントが異なります。
リーンは「顧客開発」といわれ、プロダクト開発が始まったときからユーザーの反応をベースにMVP開発・リリースが行われます。一方、アジャイルは「製品開発」といわれ、「開発・設計・要求」を繰り返すことでプロダクトの「進化」に焦点を当てています。
リーンでは、まず仮説を立ててプロダクトを作成、ユーザーに実際に使ってもらうことでフィードバックを得て何度も検証を繰り返します。ユーザーニーズを理解し、市場の開発を通じて「構築・計測・学習」を繰り返し、どのくらい売り上げが生じたのか「成果」にフォーカスします。
一方、アジャイルでは、最初からプロダクトを実装、市場に投下して検証を行う方法です。プロダクトは、必要最小限の機能を搭載したMVP開発が用いられます。
軸は「製品開発」にあり、イテレーションと呼ばれる小さなサイクルで「開発・設計・要求」を短期間で繰り返しながら、どれだけ前進したか「進化」にフォーカスします。
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プロセスとは、業務の流れを定義したもの。「誰が」「いつ」「何をして」「どのように作るのか」という仕事の流れそのものを指します。リーンとアジャイルの違いのひとつは「プロセス」の捉え方です。
リーンの原則は、ビジネス全般の側面をしっかり理解しなければならないとされています。プロセス中心の手法で、開発チームを目的達成へと導きます。
定義されたプロセスは、作業を行う上で可能な限りベストな方法であり、全ての作業にその方法が反映されます。リーダーは、適切なプロセス・プロセスの進化を管理する役割を担います。
アジャイルでは、リーダーシップについて定義がありません。プロジェクトを行う場合、チームメンバーそれぞれのプロセスをそれぞれの知見に基づいて定義していきます。そして改良を繰り返します。
プロセスは、チームの自律性を阻害するものであり、厄介なものと捉えられています。小規模なプロジェクトの目標達成ならアジャイルでも十分機能するでしょう。
しかし、規模の大きな改革を行うケースではプロセスが重要になってくるため、アジャイル開発だけでは難しいという面もあります。
プロセス中心の手法で組織を目的地へと導くリーン、チームレベルの業務で最も効果を発揮するアジャイル。それぞれ異なる軸の2つを両立させるにはどうしたらいいのでしょうか。
リーンでは、リーダーは「今何がなされているのか」、チームの現状を把握していなくてはなりません。
チームの課題を共有し、必要であればメンバーに質問し、解決法について考えさせることが大事です。メンバー全員に思考する機会を設けることで、それぞれがプロジェクトにおいて大事な役割を担っていることを認識させるのです。
また、失敗の受け止め方もリーダーの重要な役割です。「失敗こそ最大の学びのチャンス」、チームの成長には必要不可欠です。失敗が許される環境づくりもリーダーの重要な役割といえるでしょう。
気軽に何でも意見をいえる、アイディアを出せる、いざとなったらリーダーのサポートを受けられる、心理的安全性が高い環境づくりがリーダーの役割といえるでしょう。
一方、アジャイルでは、リーダーはプロセスの一部であるという考え方です。
課題に対し、リーダーが解決案を出すのではなく、チーム内で議論をするよう促します。現状の把握、よりよい解決策を導き出すようアシストし、チームの自立を促すものです。
「リーン」と「アジャイル」、それぞれの考え方を用いた「アジャイル型チームのリーン組織」による「プロセスと自律性がバランスよく機能したチームづくり」が理想です。
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異なる軸をもつ「リーン」と「アジャイル」ですが相性がよいと言われている理由が3つあります。
2つに共通する点は「小さく早く回すこと」。リーンでは知識の積み上げ、アジャイル開発ではプロダクト開発をそれぞれ「小さく早く」回すことで成果を導き出します。
言い換えれば、PDCAを最初単位で高速で行うこと。仮説検証をPDCAサイクルで回すことで、無駄なく早く目的を達成できるのです。
アジャイルのリリース単位となるMVPは必要最小限の機能を搭載した、アイディアの仮説検証可能なプロダクトです。
ユーザー検証を可能にするMVPは、ユーザーストーリーと紐づいていることが大切です。
ユーザーストーリーとの関連性が高い機能から開発するアジャイルは、「顧客志向」で「構築→計測→学習→再構築」を繰り返すことで顧客満足度を高めていくリーンと相性がよいのです。
リーンとアジャイルの組み合わせにより、顧客満足度を高めつつ、市場に早い段階でプロダクトの投下が可能です。
そのため、ユーザーニーズから外れることのないプロダクトを世に送り出すことができ、収益化も早く、後発のプロダクトに対して市場での優位性が保てます。
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「リーン」と「アジャイル」の組み合わせ効果を発揮するためには、「デザイン思考」との関係性も見逃せません。
「デザイン思考」とは、消費者・ユーザーを観察することでユーザーニーズを理解し、新たな価値・プロダクトを生み出すために必要なアイディアを導き出すための思考法です。
「問題解決思考」「プロトタイピング」「新しい価値観」などがその能力として挙げられますが、物事の意味を見出し、問題の枠組みを設定し、潜在ニーズを模索する、人々の問題と解決策を探索する思考です。
「リーン」なのか「アジャイル」なのか二者択一ではなく、それぞれの組み合わせ、そこに「デザイン思考」が加わることで効果が高まります。
3つの手法にはプロセスに共通点があります。「課題の定義→課題の理解→仮説を立てる→試作→仮説検証→結果の分析→調整・改善」なるべく最短かつ簡素な方法で、迅速に課題解決案のテストを可能にしようとする考え方が共通しています。
考え方は共通ですが、検証手段が異なります。
リーン:オンライン広告・サービスLPなどテストマーケティングにつながるもの
アジャイル:必要最小限の機能を搭載したMVP
デザイン思考:スケッチ等見た目にイメージが伝わるもの
それぞれアウトプットが異なる理由は、検証すべき課題や利用する場面が異なるから。リーンは、スタートアップを中心にビジネス的課題やユーザーニーズを得るためのプロセスとして生み出されました。
アジャイルは、エンジニアを中心に、プロダクト課題を解決するためのプロセスとして生み出されました。デザイン思考は、デザイナーを中心に、広く一般ユーザーにおける課題を検証するためのプロセスとして生み出されました。
「リーン」「アジャイル」「デザイン思考」それぞれどのプロセスを選ぶか否かは、何を検証したいか、どんな課題を解決したいかによって選ぶとよいでしょう。
リーン開発:自分たちのアイディアに対して市場とマッチしているか。サービスに対してしっかりした市場があり、新たな可能性を見出したい時はリーン開発を。
アジャイル開発:ユーザーがメリットを得られるようなプロダクトであるか。・プロダクトをいち早くユーザーに届けて、実際に使ってもって感覚を確かめたいときはアジャイル開発を。
デザイン思考:ユーザーにとってのサービス価値があるものか。ユーザーの潜在ニーズを理解し、アイディアをわかりやすく視覚に訴え、ユーザーの手ごたえを得たい場合はデザイン思考を。
価値の焦点の違いを理解した上で、何を測定したいかで使い分けるとよいでしょう。実際のプロダクト開発の現場ではそれぞれに重なる点が多く、組み合わせて活用する必要があるでしょう。臨機応変に対応できる仕組みづくりが求められます。
ただし、会社や組織の状況によって、最適なプロセスを導き出せない場合もあるでしょう。DeFactoryでは、アイディア着想からプロダクト開発まで、経験豊富なエンジニアと豊富な事業開発経験者で、一気通貫した伴走を行っていきます。
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今回は「リーン」「アジャイル」の特徴や違い、新たに開発現場で耳にすることの多くなった「デザイン思考」についてもご紹介しました。
大切なのは、ユーザが本当に求めているものを実現するために、いかに迅速に開発して市場に投下できるか、そしてユーザーの求めているモノに対して柔軟に対応できるかという点です。
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