MVP開発の目的や4つの開発手法│プロトタイプとの違いも解説

新規ビジネス開発やプロダクト開発の場面で活用されることの多いMVP開発。MVP開発とはMinimumViableProductの略で「必要最小限の機能を備えた製品」のことです。

実際に製品・サービスをユーザーに使ってもらい、ユーザーの反応を得てサービスを作り上げていくMVP開発の手法は、市場の動きに合わせて柔軟に対応できるため注目を集めています。

この記事では、MVP開発について解説すると共に、似たような意味合いで使われる「プロトタイプ」との違いについても解説します。

関連記事:【開発前チェックリスト付】ソフトウエア・アプリ開発におけるMVP開発ガイドブック

1.MVP(MinimumViableProduct)とは?

MVPを簡潔に言い表すと「最小限の実用可能な製品」のこと。

いち早く市場に投下し、ユーザーのフィードバックを得て改善を繰り返しながら開発する手法に用いられるMVP検証で活用されます。最初から完全な製品を目指すのではなく、製品開発と顧客開発を並行して行うのがMVP開発の特徴です。

MVP開発は、リーンスタートアップの開発手法として広く知られるようになりました。

リーンスタートアップとは、短い開発期間と少ないリソースで必要最低限の機能を実装したサービスやプロダクトを作成、ユーザーに実際に使用してもらうことでフィードバックを得て、顧客ニーズを満たすための改善を繰り返し開発するマネジメント手法。

実際の顧客の声を聴くことで、市場ニーズとかけ離れた製品を生み出すリスクが軽減でき、失敗確率を減らせるビジネスモデルとして注目を集めています。

1-1.MVPを作る目的│想定しているプロダクトの検証

市場でMVPが求められるのはなぜでしょうか。

これまでの開発の一般的な流れは、企画を作り、社内フィードバックを経て開発、企画に沿った製品のリリースでした。

しかし、市場のスピードが増す中で、実際にユーザーに使ってもらい、ユーザーの意見を取り入れたプロダクト開発が求められることからMVPが注目されるようになったのです。

MVPを作る目的は、想定しているプロダクトの仮説検証。

「価値仮説」「市場仮説」の検証が最大の目的です。

提供したサービスが顧客にとってお金を払うだけの価値があるものか、顧客が抱えている課題を解決できるのかをいち早く検証します。

検証で得られた情報をもとに解決策の改善や機能の追加を行い、顧客価値の向上を目指します。

また、提供したサービスにどの程度のニーズがあるのか、市場があるのか、将来の成長性は見込めるのかなど市場仮説も検証します。場合によっては、ターゲットとなる顧客の課題は、市場にあまりニーズがないという可能性もあります。

MVPを通じて顧客の反応を確かめることは、市場全体のニーズ量を確認する上でも重要です。

DeFactoryの新規事業×開発支援事業は「とにかく失敗確率を減らす=事業リスクを減らす」ことを前提にした開発の支援を行っております。仮説が正しいか否かを早い段階で実証し、開発に反映することでリスクを抑え「失敗確率を減らす=成功確度を高める」ことが可能です。

関連記事:MVP開発とアジャイル・リーンとの関係性とは?DX推進への活用

1-2.MVP開発のメリット・デメリット

では、MVP開発のメリット・デメリットにはどのような点があるのでしょうか。

MVP開発のメリットは大きく次の2つ。

  • ユーザー視点をもてる
  • 時間的・金銭的コストカット

●ユーザー視点での開発

サービスに関する仮説検証を通して、ユーザーのフィードバックを得ながら改善、新たな機能を実装するので、ユーザーニーズから外れることなく開発が行えます。

●時間的・金銭的コストカット

MVPは、顧客が価値を感じるであろう必要最小限のサービスを搭載したもの。本来、自動でシステム化する作業を手作業で行うこともあり、大規模なプロダクト開発に必要な人材・リソースを確保する必要がありません。

万が一失敗したとしてもコストを最小限で抑えることができ、軌道修正しやすいのです。

正式リリースには多くの時間を要しますが、MVPでは早い段階で市場ニーズの検証ができるので、時間的リソースの無駄も省くことが可能です。

一方、MVP開発のデメリットは、コンパクトなチームでの開発になるため、エンジニアのスキルに左右される面があることは否めません。

また、短期間でリリースすることに価値があるMVP開発では、数か月以上かかる複雑な開発には向いていません。

比較的新しく、柔軟な発想を要するMVP開発は、経営陣の理解を得られないという可能性も。時間とコストをかけて開発を行った方がいいという経営陣がいる場合には、MVP開発との相性はあまりよくないでしょう。

1-3.MVP開発の代表的な手法と事例

MVP開発にもいろいろな手法がありますが、ここでは代表的な4つのタイプとその事例についてご紹介します。

①コンシェルジュ

プロダクト開発の前段階でサービスや製品への需要を手動で検証する手法。製品を作る必要がないのでコストを抑えられます。

写真撮影サービスを開発している「Airbnb」はコンシェルジュ手法を使っています。

サービス導入前にはカメラマンを使ったMVP検証を実施。テスト結果をもとに開発を進め、サービスのリリースへとつなげました。

②オズの魔法使い

ユーザーに見える箇所は完成版のようなサービスを提供し、実際は手動で作業を行う手法。

例えば、Webサービスの注文画面だけを作り、実際の購入作業などは手動で行うなど人の手で行います。実際に完成版と同じような動作状況になるので、提供予定のサービスに需要があるのかどうかを調査できます。

今や誰もが知っている「食べログ」はオズの魔法使いで開発されたサービス。

もともとは手打ちで作られたグルメ情報のデータベースで、その内容はグルメ本をもとにしたもの。掲示板に書き込まれた改善要求にあわせて改善を繰り返した結果、現在のような口コミサイトへと進化しました。

③スモークテスト

ユーザーが製品やサービスに興味をもつかどうか事前に検証する手法。

紹介動画や事前に登録できるプラットフォームなどを作成し、実際にユーザーの反応を確かめます。提供サービスが完成していなくても、ユーザーがイメージを掴みやすいため、サービスへのニーズを検証しやすいといえます。

オンラインストレージサービス「Dropbox」はスモークテストの手法による紹介動画を作成し、その効果でβ版利用者が一晩で15倍に増加。ユーザーニーズを確証できたことにより成功へとつながりました。

④プロトタイプ

MVP開発の中でもっとも一般的な手法。実際に動作する試作品でMVP開発の中では比較的コストがかかります。製品・サービスが存在するため、さまざまな仮説検証が可能です。

日本を代表するゲーム会社の1つである任天堂。

「Nintendo Labo」で「Toy-Con」と呼ばれるコントローラーを作る際には、実際のユーザーになりうる小学生を集め、組み立てられるかを試すテストを実施。都度、問題点を洗い出し、繰り返しながらプロトタイプを作成。製品へと導きました。

関連記事:MVP開発とは?新規事業開発に適している3つの理由と開発成功のポイント

2.「プロトタイプ」と「MVP」の違い

プロトタイプは前述したように「MVP」の種類のひとつ。プロトタイプとMVPの違いのひとつはベクトルです。

プロトタイプは主に自分のチームや社内を対象としています。

一方、MVPはターゲットとなる市場に投下し、ユーザーに実際に使用してもらって反応・評価を得ることを目的としています。

プロトタイプについて、少し詳しく見ていきましょう。

2-1.プロトタイプとは?

プロトタイプとは「試作モデル」という意味です。ゲームなどソフトウェア開発の初期段階では、通常プロトタイプを作成します。

プロトタイプが求められる背景には、開発者間のコミュニケーションの問題があります。

Webシステム等の担当者が、デザイナーや開発者にイメージを伝えることは簡単ではありません。明確に伝わらず何度もやり取りが生じてしまってはコミュニケーションコストがかかり、ストレスが生じます。

しかし、あらかじめイメージをまとめてプロトタイプを作成した上で調整すれば、お互いの認識が大幅に異なることなく、結果的に工数削減につながります。

2-2.プロトタイプの種類

プロトタイプにはいくつかの種類があります。ここでは主な3つのプロトタイプについてご紹介します。

●ファンクショナルプロトタイプ

「ファンクショナル」とは実用的・機能的という意味。アプリやソフトウェア開発では、実際の動きのシュミレーションを行います。

例えば、ECサイトを立ち上げる際に商品を「カートに追加→決済→購入完了」の流れを具体的に動作確認するもの。アプリ開発では、ペーパープロトタイピングやInVisionを使ったシミュレーションが挙げられます。

あくまでも開発中の試作品の操作性・動きを検証。事前に実際の動きをチェックできるので、問題点の抽出を行えるのがメリットです。

●デザインプロトタイプ

Figma、Sketch、AdobeXDなどのプロトタイピングツールを使って、見た目を完成形に近づけた形に見せるプロトタイプです。

アプリやソフトウェア開発では、開発段階では動作が軽かったのに、リリース後に動きが重たいなどの事象が発生するケースがあります。

そのため、完成品に近づけた試作品で、ユーザーが実際に使用したときの重たさや視認性などチェックするのがこのプロトタイプです。

●コンテクスチュアルプロトタイプ

「コンテクスチュアル」とは文脈的なという意味。

製品やサービスの動画を作り、ユーザーが実際に使うイメージを与えます。動画でのプロモーションのほか、カタログやテレビのCMなどを用いるケースも。

ユーザーに疑似体験を与えられるので、より具体的な反応が見え、問題点・改善点も明確になりやすい手法です。

2-3.プロトタイプ作成のメリット

プロトタイプ作成の具体的なメリットを3つご紹介します。

2-3-1.段階的に開発できる

制作前に全ての仕様を固めると、途中での軌道修正が難しくなります。発注者も最初から全てをイメージできているわけではありません。

試作・検証を繰り返しながらニーズに合った製品・サービスへと近づけていけます。

2-3-2.認識のズレを修正できる

開発メンバー全員が必ずしも同じ感覚を持ち合わせているとは限りません。

感覚を文字化するのはとても難しいことですが、最初にプロトタイプを作成することでチーム全体の認識・方向性を確認できます。

また、万が一方向性がズレていた場合にも、早い段階で修正・改良を行えるので双方にストレスがなく、安心・信頼のもとに開発を進められます。

2-3-3.製品・サービスの質の向上

開発中の製品のプロトタイプを作成し、実際にユーザーに使ってもらうことで、想定外の使用法やバグの発見などトラブルの早期発見が可能です。

開発最終段階でトラブルが発生した場合、初期段階からやり直しとなると想定外の時間とコストにより大幅な打撃を受けます。早期に修正・改善が行えれば品質の高い製品やサービスに導きやすくなります。

関連記事:新規事業の課題とは?MVPで開発を成功に導くポイント

3.MVP開発で気をつけるポイント

ここまでMVP開発、中でもプロトタイプとの違いや特徴について説明してきました。

実際にMVP開発を行う際にはどのような点に気をつければよいのでしょうか。

3-1.何を検証するのかを明確にする

MVP開発でどんなことを検証したいのか、あらかじめ明確化しておきます。

どのような結果が得られたらMVP開発を終える、あるいは改善するのかという意思決定の指標が必要です。

MVP作成、維持にも金銭的・時間的なコストがかかるため、何を検証すべきなのかをあらかじめ明確にしておくことが大切です。

3-2.スモールスタート・コストカットを意識

MVP開発では、ユーザーとコミュニケーションを多くとり、製品を使用して得られるフィードバックが重要です。機能をあれこれ詰め込んでしまうと、その分開発期間や費用がふくらんでしまいます。

フィードバックを多く得られれば、サービスの改善点やニーズの手ごたえを感じられます。

ユーザー像が明確に見えてこない間は、外部に委託するのではなく、できるだけ自分たちで手作業して、直接ユーザーの声を聴くようにしましょう。

3-3.期限を決める

MVP作成や仮説検証は、完成版と比べると機能が劣ります。当初の目的を見失い、完璧を求め始めるとローンチが遅れ、金銭的・時間的コストが多くかかってしまいます。

目的を見失わず最低限のコストでローンチを行うためにも、あらかじめ期限を決めておくとよいでしょう。

4.まとめ:「MVP開発」に関する支援を承ります

MVP開発について、その目的や開発手法、開発手法のひとつであるプロトタイプについて解説してきました。

MVP開発にはさまざまな手法があり、自分たちのプロダクト開発にはどの手法が合致するのか、その規模や予算によっても異なります。

DeFactoryでは、アイディア着想、ユーザーヒアリング、テストマーケティング、アジャイル・MVP開発と、プロダクト開発における立ち上げ支援を全力サポートいたします。 

また、経験豊富なエンジニアと事業開発経験者で、開発だけでなく事業設計から「一気通貫」した伴走を行ないます。 

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この記事を書いた人
DeFactory代表取締役 事業開発、デジタルマーケティング(検索領域)、グロースハックが得意領域です。 事業の壁打ちのご相談お受けしております!

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