MVP開発とは?3つのメリットや開発事例について解説

競合他社がしのぎを削る市場において、新たなプロダクトを提供するのは容易ではありません。しかし、MVP開発を取り入れることによって、迅速なプロダクトの提供が可能となります。

特に、新規市場においては先行者利益も期待できるため、自社のプロジェクト内容に合わせて取り入れるのがおすすめです。

この記事では、MVP開発の概要を解説した上で、MVP開発を実行するメリットや流れ、注意点についてもご紹介します。さらに、MVP開発事例としてECサイトレコメンドエンジンについても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

関連記事:MVP開発が新規事業開発に適している3つの理由と開発成功のポイント 

1.MVP開発とは「必要最小限のプロダクトを提供する手法」

MVP開発とは、必要最小限のプロダクトを提供する「MVP(Minimum Viable Product)」の手法を用いた開発方法のことです。

MVPは、工数や資金などが限定される中で素早い新規事業の立ち上げを目的とした「リーンスタートアップ」の考え方に即したもので、アメリカの起業家であるエリック・リース氏の著書から広まりました。

その特徴は、プロダクトを市場に素早くリリースすることで、ユーザーからのフィードバックや市場のレスポンスを迅速に得られる点です。

また、MVP開発と対になる手法として「ウォーターフォール開発」があります。

ウォーターフォール開発では、事前に決めた仕様通りに開発を進め、途中で方向性がぶれることなく仕様に沿った成果物を作ります。ただし、事前に決めた仕様から変更があった場合は、修正対応がしにくいというデメリットがあります。

従って、試行錯誤しながら素早くリリースする場合は、MVP開発を行うとよいでしょう。

また、MVP開発は、市場ニーズに対するマッチ度や有用性を確認できる点がメリットといえます。MVP開発では、必要最小限のプロダクトへの改善を何度も繰り返すため、ユーザーが本当に求める機能の実装を目指せます。

2.MVP開発を実行する3つのメリット

MVP開発を実行するメリットは、主に3つあります。新規市場での早期収益化や、スピード感のある開発・提供など、競合における優位性を確立するためにも役立つ内容ばかりです。

以下の項目でさっそく見ていきましょう。

2-1.メリット①新規市場での早期収益化が見込める

MVP開発を活用すれば、新規市場における早期の収益化が見込めます。というのも、MVP開発は必要最小限のプロダクトとして提供する特徴を持つためです。

特に、新規市場においては、リリースまでの工数を要するほど、レッドオーシャン化する可能性が高まります。ユーザーからのフィードバックや反応を取り入れて、改善を随時行うMVP開発であれば、プロダクト投入までの工数を最小限にできるでしょう。

2-2.メリット②スピード感を持って開発・提供できる

スピード感のある開発・提供を実現できるのもMVP開発のメリットです。新たなプロダクトを制作する際、はじめから完璧な設計・開発を実行するのは困難を極めます。

しかし、MVP開発であれば、リリース後の改善を前提にして、スピード感を持った市場提供が可能です。

また、時流とともに移り変わるユーザーニーズを敏感にキャッチして、改善サイクルへ盛り込めるのも利点といえるでしょう。顧客が真に求めるサービス形態へのブラッシュアップが可能になり、市場優位性の確立にもつながります。

2-3.メリット③リスクを最小化できる

MVP開発を実行すれば、プロダクト開発におけるリスクの最小化が可能です。仮に、膨大な工数をかけて開発したプロダクトが、市場ニーズにマッチしていない場合、再開発やプロジェクトの中止に至る可能性があります。

一方、あらかじめ必要最小限のプロダクト提供を行うMVP開発の場合は、リリースに至るまでのコストを抑えているため、失敗のリスクを大きく減らせます。市場ニーズにマッチしていなかった場合も、すばやく方向転換できるので、自社における損失も抑えられます。

関連記事:MVP開発の目的や4つの開発手法│プロトタイプとの違いも解説 

3.【5STEP】MVP開発の流れ

続いて、MVP開発の流れを5つのステップで紹介します。

3-1.ステップ①課題を明確にする

まずは、自社として解決すべき課題を明確化することがポイントです。課題意識を明確にさせることで、新たなアイデアが持つ価値を共有しやすくなります。

また、課題の大きさを定量化することで、プロダクト提供で得られるマーケットの規模を把握しやすくなります。

場合によっては、ユーザーインタビューを実施して、ユーザーが抱えている課題や悩みを抽出するのも手です。提供者側からは見えてこない具体的な課題を教えてもらえるケースもあります。

3-2.ステップ②仮説を立てる

次に、MVP開発を通じて評価する仮説を準備します。具体的には、「プロダクトが課題をどう解決するのか?」「自社が提供するプロダクトの価値は?」などの視点を持ち、仮説を立てることがポイントです。

曖昧な仮説を立ててしまうと、適切な評価ができないため、なるべく明確に設定しましょう。社内のプロジェクト関係者以外でも理解できるように、明文化できればベストです。

3-3.ステップ③MVPを作成する

3つ目のステップで、MVPの作成に取りかかります。ポイントは、MVPとして備えるべき必要最小限のプロダクトを選定して実装することです。

場合によっては、実装予定のプロダクトそれぞれにユーザーストーリーを用意することで、より高精度なMVP開発が可能となります。なお、MVP開発としての効果を最大化させるためにも、綿密に機能を選定した上で開発に着手することが重要です。

3-3.ステップ④仮説を検証する

作成したMVPをユーザーに実際に使ってもらい、フィードバック事項をヒアリングしましょう。仮説の検証効果を向上させるため、ヒアリング項目はなるべく「定量的」にして、数値や数量で回答できるように作っておくのがベストです。

質問例としては、「3つの機能のうち、利用価値が高い機能から順位をつけてください」「検索機能について10段階で評価してください」などの内容が良いでしょう。

なお、データの母数が少ないと信頼性に欠けやすいので、自社として納得のいくデータ数をあらかじめ設定しておくのがおすすめです。

3-3.ステップ⑤評価・改善を行う

4つ目のステップで得たフィードバックをもとに、当初の仮説に対する評価を実施しましょう。現行機能の改善や新機能の実装、あるいはプロダクトの方向性そのものの転換を選択しなければならないケースもあります。

いずれにしても、評価・改善のサイクルを繰り返し実施することがMVP開発の大きなポイントです。何度もブラッシュアップしていくことで、ユーザーニーズに合致したプロダクトへと近付いていきます。

4.MVP開発に取り組む際の注意点

MVP開発に取り組む上では、注意しておきたいポイントがいくつかあります。以下の項目では、3つの注意点について紹介します。

4-1.ユーザー視点でMVP開発を実行する

まず注意したいのは、開発者視点ではなく、ユーザー視点で取り組むことです。というのも、MVP開発を行うメリットは、ユーザーに対するアプローチを早い段階から行うことで新規市場でのポジショニングを行える点にあるためです。

仮に、開発者の視点だけを取り入れたプロダクトをリリースしても、ユーザー検証の効果が損なわれるおそれがあります。プロダクトによる課題解決を行うことを主軸として、ユーザーからヒアリングした機能などを適宜取り入れることで、MVP開発の効果をより高めやすくなるでしょう。

4-2.フィードバックが得られる環境を作っておく

ユーザーからのフィードバックが得られる環境を作っておくことも、大切なポイントといえます。MVPの開発工程では、ユーザーからの評価をもとに機能の改善や変更を実施していくためです。

ユーザーのフィードバックは必須となるため、リリースしたプロダクトに対する意見をもらえるように、良好な関係を築いておくことが重要です。また、なるべく具体的な質問を行うことで、関係者間でフィードバック事項を共有しやすくなります。

4-3.スタート段階で完璧なプロダクトを目指さない

プロダクトの迅速なリリースを実現するためにも、「完璧な状態に仕上げる」という目標設定は避けたほうが良いでしょう。MVP開発は、スピード感を持ってリリースした上で、フィードバックを得ながら改善を繰り返す開発手法です。

はじめから完璧を目指して開発に取り組んだ場合、工数は多くかかる上、MVP開発が持つメリットを充分に活かせません。「必要最小限のプロダクト」という目標設定を見失わないようにしながら、柔軟な姿勢で開発に取り組むことが大切です。

5.【MVP開発事例】ECサイトレコメンドエンジン「PeecAI」

ここからはMVP開発事例として、DeFactoryが手がけた「PeecAI(ピークエーアイ)」についてご紹介します。まずは概要について解説した上で、具体的な開発期間・進め方について触れますので、ぜひ参考にしてみてください。

5-1.パーソナライズAIレコメンドエンジン「PeecAI」とは?

「PeecAI」は、ShopifyというECサイトに特化したパーソナライズAIレコメンドエンジンです。レコメンド機能は、ユーザーがECサイトで購入・閲覧したデータ履歴に基づいて、おすすめ品へ誘導する特徴を持っています。

なかでも「PeecAI」は、以下4つの機能によって、商品の売り上げに貢献できます。

機能特徴
提案機能・レコメンド機能:合わせ買いや関連商品、トレンド商品をレコメンドできる・レコメンド表示設定機能:レコメンドのタイプ選択、位置、種類、表示/非表示に関する設定ができる
カスタマイズ機能・商品手動推薦:優先したい商品を手動で設定できる・カテゴリ手動推薦:優先したい商品に関するレコメンドロジックがカテゴリ毎の組み合わせで行える
カート落ち防止機能・リマインドレコメンド:再訪したユーザーへカート内の商品をレコメンド表示できる
分析機能・全体分析・商品別分析:レコメンドを介して購入された商品を分析できる

なお、「PeecAI」は初期設定や運用の手間がない上、最短5分でレコメンド表示が開始されることも特徴です。分析機能を使えば、レコメンド機能の利用効果を可視化できます。

関連記事:Shopifyのレコメンド・レコメンドエンジンとは?メリット・デメリットとおすすめアプリ

5-2.「PeecAI」の開発期間・進め方

それでは、「PeecAI」の開発期間と進め方についてご紹介します。

【開発期間】

・MVP開発期間:約4ヵ月(約3人/月)

・有料化リリースに向けた評価・改善期間:約5ヵ月

【進め方】

①開発前に、必ず使ってくれる利用者を数社確保

②初期の価値検証ポイントや仮説を定義し、最も小さな機能のみを実装

③開発中も、想定利用者へヒアリングを続け、価値や機能をヒアリングして検証(未実装)

④利用者に対して無料で提供

③提供後のフィードバックをもとに、機能を追加(無料提供開始後、約5ヵ月かけて追加実装を実施)

まず開発期間に関しては、約4ヵ月で利用者への無料提供に至っています。その後、利用者からのフィードバックをもとに機能の追加実装を行い、約5ヵ月後には有料化リリースに至りました。

進め方のポイントとしては、開発に着手する前にフィードバックをもらえる利用者を確保したことが挙げられます。

なお、現在の「PeecAI」は安価なコストで成果創出事例を作り、必要な機能のみを備えたレコメンドエンジンとして、利用者獲得に寄与しています。

6.まとめ

MVP開発を実行することで、新規市場における早期の収益化や、プロダクトのリスク最小化などのメリットが期待できます。自社のニーズに合わせて、MVP開発を取り入れると良いでしょう。

とはいえ、市場リリースに向けた迅速な開発を実現するには、経験豊富な専門家のサポートが欠かせません。

DeFactoryでは、アイディア着想、ユーザーヒアリング、テストマーケティング、アジャイル・MVP開発と、プロダクト開発における立ち上げ支援を全力サポートいたします。

また、経験豊富なエンジニアと事業開発経験者で、開発だけでなく事業設計から「一気通貫」した伴走を行います。

事業開発や立ち上げを検討しているご担当者様がいましたら、問い合わせページから資料請求や無料相談などお気軽にご連絡くださいませ。

関連記事:【Shopifyアプリ】レコメンド成果が出やすい商材や条件についてご紹介

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この記事を書いた人
DeFactory代表取締役 事業開発、デジタルマーケティング(検索領域)、グロースハックが得意領域です。 事業の壁打ちのご相談お受けしております!

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